いつか「帰省ラッシュ」がなくなる日がやってくる!?

東北の農業や漁業の現場を取材したタブロイド紙と、野菜や魚などの生産物をセットで届ける新しいタイプのメディア「東北食べる通信」。その名物編集長が、「都市」と「地方」を切り口に、これからの農業・漁業、地域経済、消費のあり方、情報社会における生き方までを語り尽くした、『都市と地方をかきまぜる』(光文社新書)を、cakes読者に特別公開します!

二 ふるさとができてよかった

◆地方に憧れる若者たち

震災後時間が経つにつれて、被災地にボランティアにやってくる人の数は減っていったが、定期的にやってくる人と被災地の結びつきは強固になっていった。彼らは休日や長期休暇になると、繰り返し繰り返し被災地にやってくる。まちづくりや一次産業支援、コミュニティ運営など様々な分野で、仕事で磨いてきたスキルと蓄積してきたノウハウを活かし、特定の人や地域に関わり続ける。一過性ではなく継続してやってくることで、人や地域が立ち上がり、変化していくことを共有できることに喜びを感じていたのだ。住民票は都会にあるのに、むしろこちらの地域に住民票を置いているかのように、他人や地域を気にかけていた。

中には、血縁はなくとも、まるで親子や親戚のような深い付き合いに発展している人も見受けられた。「自分の親には話せない悩みでも、わが子のように接してくれる付き合いの深い被災者には話せるんです」と吐露する若い女性もいた。家族の関係が希薄になる中、まるでそれを補完するかのような関係をつくっていた。

私は都心で定期的に都市住民と車座座談会を開いているが、都会にいながらにして被災地に対して常に心を寄せている人も少なくないことがわかった。実際に被災地に出向くことがなくなっても、被災地のボランティアで感じた生きる実感ややりがいなどを感じるために、被災者が都内の復興イベントに参加する際に手伝いに馳せ参じる人もいる。被災地文脈とは関係なく、余暇の時間を活用して、生きる実感ややりがいを満たすために、プロボノ(自らの専門知識や技能を生かして参加する社会貢献活動)やボランティア、趣味の活動に勤しむ人たちが多いことにも気づかされた。

◆「食うための仕事」と「二枚目の名刺」

そういう人たちに共通しているのは、昼間従事している仕事は「食う」ためにやっていて、それに飽き足らないということだった。自分自身が食べるため、家族を食べさせるためには、お金が必要だ。だからやりがいのあるなしには目をつむって、割り切って働く。そして本当に自分がやりたいこと、やりがいを感じられることは、職務外の余暇の時間にやるという、パラレルキャリアを志向する人たちが本当に都会には多い。

そういうスタイルでパラレルに働き生きる人たちは、「二枚目の名刺」を持っている。「三枚目の名刺」「四枚目の名刺」を持っている人もいた。彼らと名刺交換をすると、面白いことに本業の名刺についての説明は実にあっさりしていて、二枚目の名刺については熱っぽく語るのである。ソーシャルビジネス、まちづくり、イベント開催、ボランティア活動など、二枚目の名刺で活動する先は、小さくて手触り感があり、目に見える相手との関係性があり、自分の役割ややりがいを感じられるところだ。

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都市と地方をかきまぜる 「食べる通信」の奇跡

高橋博之

東北の農業や漁業の現場を取材したタブロイド紙と、野菜や魚などの生産物をセットで届ける新しいタイプのメディア「東北食べる通信」。その名物編集長が、「都市」と「地方」を切り口に、これからの農業・漁業、地域経済、消費のあり方、情報社会におけ...もっと読む

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a_tocci 「田舎に行くと、みんな玄関に鍵はかけないし、おすそ分けで食べものを共有しているし、まるで集落全体が家族のようにしてそれぞれを気遣っていたことに驚き、うらやましいと感じた」 https://t.co/WfFWHXXjOC 7ヶ月前 replyretweetfavorite