三 『千と千尋の神隠し』と『ハリー・ポッター』
宮沢賢治と宇多田ヒカルの無常観
私の自宅がある岩手県花巻市の北上川沿いには、ところどころに小さな雑木林がある。夜明け前によく散歩するのだが、暗闇の中、林の中からガサガサ何かが動く音がしたり、突然野鳥が飛び立ったりする。そんな中をひとりとぼとぼ歩いていると、普段使っていない野性の感覚が研ぎすまされ、自分が生きものであるという当たり前のことを自覚する。
その雑木林を抜けたところの川の畔に、「下ノ畑ニ居リマス」で有名な宮沢賢治自耕の地がある。かつてこのあたりは薮地だったが、賢治は近くの宮沢別邸で独居自炊をしながら、鍬で開墾。トマト、白菜、たまねぎ、アスパラガスなどを植えた。創作活動もここでした。
その宮沢賢治に心酔しているのが、宇多田ヒカルだ。賢治の童話に多用される擬音語に取りつかれ、楽曲に多用している。
『風の又三郎』の冒頭部で、賢治はこう書いている。
どっどど どどうど どどうど どどう
青いくるみも吹きとばせ
すっぱいかりんも吹きとばせ
私も小学生のとき音楽の授業で歌い、擬音語の部分が耳に残って家に帰っても離れなかった。宇多田ヒカルも『WINGS』という曲の歌詞にある「ラララらララ ラララヲウヲオ」の部分は、賢治の詩に憧れてカタカナ表記と平仮名表記を混ぜたと自ら語っている。また、『テイク5』という曲の歌詞も、彼女は賢治の世界とダブらせて書いている。
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