歯医者さんと歯科衛生士さん

福本さんは脳性まひゆえに歯医者さんでも予期せぬ動きが出てしまいます。そんな時、どんな溝が生まれるのでしょうか? 嚥下障害、障害者歯科、そして、息子さんの恋人という新しい出会い。今回は、一見関連のなさそうな話題が、ゆるゆると繋がっていく千夏ワールドです。

あさりを塩水につけて冷蔵庫に入れたのは二日前。鼻で鮮度を確認する。おそらく大丈夫だ。それにやばいのは熱をいれても口を開かない。あさりは扱いやすい食品だ。この量ならあさりスパゲティといきたいところ、ショートスパゲティを。柔らかく湯がけば、ニ・三度噛んで、ごくんと飲み込める。

「口の中で溶けてなくなるものばかり食べていても、嚥下障害は進む。少し難易度を上げてみた方がいいよ。福本さん、まだまだ人生長そうだし」と数時間前みた歯科医のにやっとした顔を思い浮かべる。

思い起こせば、今通院している歯科医とも長いお付き合いだ。この人にたどり着くまでには、ずいぶん嫌な思いをした。 特に歯科は、「突然動きだすので怖い」「口が開かない」などを理由に、脳性まひ者はお断りを受ける。私も十件以上診療を拒否された。

ある歯科では、なんの説明もなく魚の網のようなもので体を固定され、口に猿轡のようなものをはめられかけた。抵抗し、治療の説明を求めると、 「説明もなにも、こうでもしないと君のような人は動くでしょ。人がせっかく診ようとしてあげてるのに、生意気だよ。だから障害者は……」と怒り出す始末。 それでも歯が痛いのだけは我慢できず、ヘルパーさんの「たにじい」と歯科医を探し求めた。二〇一一年六月、大阪大学病院の障害者歯科にたどりついたというわけ。

ショートパスタを表示された二倍の時間で湯がいてもらう。あさりとねぎとバターを加えて炒め、大皿に入れる。パスタが膨らむふくらむ。それに固さはあまり変わらない。ありゃりゃ。 「これ、いつもの倍ぐらいの量やで・食べても食べても減らへんよー。いつまででも食べてられる魔法のショートスパ」と言う私にへルパーさんは笑う。

「あっ」と私は思いだし笑いを重ねる。「息子も小さい頃…・・・ラーメン屋さんの麺って多いから、2人で半分こするのがちょうどよかったのよ。で、ある日僕一人分食べられる。ラーメン二つ!って大きな声で言うた。結果、食べても食べても減らへんって、べそかいて」

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障害マストゴーオン!

福本千夏

脳性まひ者の福本千夏さん。 50歳にして就職して、さまざまな健常者と関わる中で、感じた溝を語ります。

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