橋本治の豹変力
急に「しゃべる」と、ドキッとする。
あなたは文章を書くとき、常体と敬体はどう使い分けてますか?
学校の作文の授業なんかでは「“ですます調”か“である調”か、どちらかでそろえましょう」と教わったかもしれません。
たいていみんな、その教えが身体に染み付いちゃっているもんだから、いまだに「ですます調」で文章を書いている途中に、「だよ」とか「なんだ」とか書くと減点されるような気持ちになるんですよね。
同じ相手(想定読者)に対しては、同じ文体を使わないといけないのでしょうか?
いや、本当はそんなことはないはず。
よく耳を澄ませてみれば、子供たちに「ちょっとしずかにしてねー」とやさしく伝えても、全然静かにしてくれなければ「し! しずかにして!」と声を荒げて、それでも静かにしてくれなければ、最終手段として「もう少しだけ、お静かに願えますか」と丁寧に低い声ですごむ人がいる。
伝える相手によって、立場によって、状況によっていろんな言い方をするものです。
ふだん私たちは無意識に“文体”を使い分けています。
「文体は統一しなければならない」というのは思い込み。
たとえば橋本治さんの文章を読むとしみじみそう思います。
橋本治さんは文体使いの天才。
これを聞いて、彼の代表作である『桃尻娘』を思いつくあなたはきっと読書好きのはず!
時には女子高生にも、厳しい評論家にも、やさしい人生の先輩にもなる。
読み手の心に届かせるために変幻自在なカメレオン文体。
文体を切り替えることによって、“感情の見せ方”をコントロールできるのです。
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