第281回 音楽と数学:音は波(前編)

「音楽と数学」シーズンが始まりました。まずは《音は波》という話題から。ユーリといっしょに波にチャレンジ!

登場人物紹介

:数学が好きな高校生。

ユーリのいとこの中学生。 のことを《お兄ちゃん》と呼ぶ。 論理的な話は好きだが飽きっぽい。

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双倉図書館にて

は高校生。今日は中学生のいとこ、ユーリといっしょに双倉図書館(ならびくらとしょかん)で開催されているイベントにやってきた。

イベントは《音楽と数学》という一般向け企画で、 音楽と数学の関わりについてパネル展示がなされている。 でも、単なる展示ではなくあちこちにクイズや体験コーナーもあるらしい。

一般向け企画だから、双倉図書館はいつもよりずっと人が多い。

もちろん、ミルカさんテトラちゃんもいっしょに来ているのだが……

ユーリ「お兄ちゃん、早く早く! たっくさんパネルがあるから、全部まわるのに時間足りなくなるよ! ほら、は・や・く!」

「ちょっと待った、ユーリ」

ユーリ「あっ、スタンプラリーのシートもらって来る!」

「おいおい」

ユーリはインフォメーションにさっと走る。

いつもに増してはしゃいでいるなあ。

ユーリ「はい、これお兄ちゃんの分。会場にクイズパネルがあって、挑戦したらスタンプもらえるんだって!」

「ユーリ、ミルカさんやテトラちゃんとはぐれてしまったじゃないか。いったんエントランスまで戻ろうよ」

ユーリ「だーいじょぶだって。またすぐ会えるって」

「何だかこの会話、既視感あるぞ……前も同じようなことあったよね」

ユーリ「そーだっけ」

「そうだよ。同じこと繰り返してる。ユーリはいつもパッと先に行動するからなあ。いったりきたりしているうちに他のみんなとはぐれちゃうんだよ」

ユーリ「だってお兄ちゃんたち、歩くの遅いじゃん! 早く見たいのに! それより、ねーねー、どれから見る?」

「順番に見ていけばいいんじゃない? ええと、ここは《音は波》のコーナーだなあ」

ユーリ《音は波》と掲示されている部屋に入っていった。

《音は波》

ユーリ「ほらほら、お兄ちゃん。あそこにさっそくクイズパネルがある!」

クイズ(音の高さ)

(A)(B)(C)は、音をグラフとして表したものです。

最も高い音はどれでしょうか。また最も低い音はどれでしょうか。

(A)

(B)

(C)

※横軸は時刻を表し、縦軸は音圧を表しています。またグラフはどれも同じスケールとします。

「なるほど」

ユーリ「これはわかる! カンタンだよ!」

「そうだね」

ユーリ「一番高い音は(B)で、一番低い音は(C)でしょ?」

「うん、それで正解」

クイズの答え(音の高さ)

(A)(B)(C)は、音をグラフとして表したものです。

最も高い音は(B)で、最も低い音は(C)です。

(A)

(B)

(C)

※横軸は時刻を表し、縦軸は音圧を表しています。またグラフはどれも同じスケールとします。

ユーリ「じゃ、スタンプ押して……っと、次のパネル!」

「ちょっと待って、ユーリ。(B)が最も高い音で(C)が最も低い音だというのはどうしてか、わかる?」

ユーリ「え、そんなのいーじゃん。次行こうよ、次。せっかく来たんだから、どんどん行こ!」

「せっかく来たんだから、ちゃんと考えていこうよ。《どうして》と考えようよ」

ユーリ「真面目かいっ! 《どうして大好き高校生》め!」

「謎概念を作るなよ」

ユーリ「……えーとね。(A)よりも(B)の方が細かくて、たくさんくしゃくしゃ!ってなっているから高い音。 (A)よりも(C)は一番……一番広いから? 何ていえばいーの?」

「そこだよ」

ユーリ「?」

「グラフをパッと見たら、どれが高い音でどれが低い音かはすぐわかるよね」

ユーリ「カンタン。見ればわかる」

「そうだね。でも、その理由を言葉で説明するのは意外に難しい。それはなぜかというと《それ》を表す単語を持っていないから。 単語を持っていないと《それ》をうまく指し示すことができず、理由をうまく説明できない」

ユーリ「いきなり、ややこしーこと言い出したね?」

「ユーリはバシッと決めるのが好きだろ? 『細かくて、たくさんくしゃくしゃ』みたいに言っても伝わらない」

ユーリ「じゃ、何て言えばいーの?」

「《周波数(しゅうはすう)が高い》と言えばいい」

ユーリ「しゅーはすー……」

「そう、周波数。(A)と(B)を見比べると、(B)の方が周波数が高いことがわかる。だから、(B)の方が音が高い」

ユーリ「……」

「そして、(A)と(C)を見比べると、(C)の方が周波数が低いことがわかる。だから、(C)の方が音が低い。このグラフを、周波数が高い順に並べると、(B)>(A)>(C)という順番になる。この順番はそのまま音が高い順になる。 だから、最も音が高いのは(B)で、最も音が低いのは(C)になる」

ユーリ「ちょっと待ってよ、お兄ちゃん。その《周波数》ってどーゆー意味?」

「いいぞ、いいぞ! それは『周波数の定義』を聞いてるんだね。それは正しい態度!」

ユーリ「だって、意味わかんなかったら意味ないじゃん」

「まさにそうだよね。意味分からない言葉に言い換えても意味はない。その通り。周波数は『一定の時間で何回振動したかを表した量』だよ。 たぶん、《音は波》のコーナーなんだから、どこかに定義を掲げたパネルがあると思うんだけど……」

ユーリ「パネル、パネル……あっ、あれ?!」

ユーリは、少し離れたところにあるパネルに駆け寄る。ユーリを追いかける。

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数学ガールの秘密ノート

結城浩

数学青春物語「数学ガール」の中高生たちが数学トークをする楽しい読み物です。中学生や高校生の数学を題材に、 数学のおもしろさと学ぶよろこびを味わいましょう。本シリーズはすでに12巻も書籍化されている大人気連載です。 (毎週金曜日更新)

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コメント

as_bara3 『一般に』という言葉で話が広がる。 それまでの具体例によらずどんな○○でも、という言い換えがわかりやすい。 8ヶ月前 replyretweetfavorite

chibio6 昔からド・レ・ミ…の音の間が均等なのかどうか、その間に音はないのか、すべての曲は五線譜で表すことができるのか気になっていたので、楽しみ。 8ヶ月前 replyretweetfavorite

tsatie |数学ガールの秘密ノート|結城浩|cakes(ケイクス) 嗚呼やっとこさちゃんと?まぁ一通り?読むことができたぞ。なんかとてもモヤモヤしてるけど初回だもの♬ https://t.co/V2sj8UD0Pr 8ヶ月前 replyretweetfavorite

aramisakihime 音と波だけでなく「一般に」の解説もあって素敵。『数学文書作法』を思い出しました。 8ヶ月前 replyretweetfavorite