※ 『週刊ダイヤモンド』2019年6月15日号より転載(肩書・数値などは掲載当時)
平成最後の決算期末となった2019年3月29日。某大手生命保険の社長室では頭を抱えるA社長の姿があった。18年末から30年国債利回りが徐々に下がり、ついに0.51%という低水準で期末を迎えてしまったためだ。
日本銀行によるマイナス金利政策導入直後の水準(0.55%)を下回る低金利に直面したA社長は、「早急にリスクテーク方針を見直さなければ……。これ以上ステークホルダーに迷惑を掛けられない」と苦しい表情を見せた──。
ここまで深刻かどうかはともかく、19年3月期決算は、見掛けと実態のギャップが大きいものだった。
下図をご覧いただきたい。情報開示のあった大手生保4社(日本、第一、住友、明治安田)が保有する、国内公社債の残存期間別の割合の推移を示したものだ。
14年ごろまでとそれ以降では、明らかに傾向が変わっていることが分かる。10年代の前半までは各社とも保有する公社債の残存期間を延ばしていたのに対し、10年代の後半は長期化が止まっている。
生保にとって超長期債への投資は、資産運用でリターンを追求するのが主な目的ではない。生保が提供する超長期の保障は、将来にわたり一定の利率(予定利率)を保証しているため、生保経営は金利変動の影響を強く受ける。2000年前後に相次いだ中堅生保破綻の一因も金利低下だった。
将来にわたり金利水準を保証している中で金利が下がると、生保の支払い負担は実質的に重くなってしまう。超長期債への投資はこの金利変動リスクをヘッジする役割を果たしている。その傾向が変わったということは、10年代前半までは金利リスクの削減を進めてきたものが、その後はリスク削減を中断していることになる。
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