子どもを愛せない──負の連鎖
親から正当な愛情を注がれずに育った人は、もうひとつ問題を抱えます。自分の子どもの愛し方がわからないのです。
こんな例がありました。
この人は子どものころから敏感すぎることで、いろいろ苦しかったそうです。母親は敏感な子どもを煩わしいと感じていたらしく、「私は母から嫌われていた」と言います。父親は気に入らないことがあると殴るタイプで、両親が離婚して彼女は仕方なく母親に引き取られます。しかしほとんど育児放棄状態で、男性と遊んでばかりいたといいます。多くを語りませんが、つらい子ども時代を過ごしたようです。
結婚して子どもが生まれました。女の子です。娘も敏感気質を持っているのを見て、彼女は「面倒だ、こんな子と関わりたくない」と思います。しかし「私みたいにさせたくない」という気持ちもあります。その狭間で、どうしたらいいのかわからないまま毎日を過ごしています。
このケースは、いわゆるアダルトチルドレンです。親から愛情をかけられ、守られて育ってこなかったことが心の傷になり、自信も自己肯定感もないまま、自分が親になってしまった。そして子どもの中に、かつての自分を見ているのです。
「私みたいにさせたくない」ということは「私がそうだ」と言っていることです。その「私がそうだ」というものが子どもに伝わります。親が不安が強くていつもイライラしていたら、その強い不安は子どもにもわかります。夫婦仲が悪くてけんかばかりしていると、その不穏な空気が胎児や赤ちゃんに伝わります。とりわけ敏感な子は感じ取ります。