こんな「思いやり」は逆効果

自衛隊初の現場の臨床心理士として、トップの利用率と9割の復職成功率を誇り、これまで3万人以上の心を解放してきた玉川真里氏が、落ち込みから立ち直るメソッドをわかりやすく紹介します。『イヤな気分をパッと手放す「自分思考」のすすめ』をcakesで特別連載!(毎週火曜更新)

相手を嫌いにならないために距離を保つ

 相手と距離を保つ、ということについて、もう少しお話をしようと思います。
 家族も、上司や同僚も、また、心の専門家もそうなのですが、「自分が救わなければ」と思ってしまうと、非常に不運な状態を招きます。
「死にたい」などと言われると、脅迫されているように感じるのです。脅迫してくる相手に好意を持ち続けるのは難しいですよね。
 そうして、相手のことが嫌いになっているにもかかわらず一緒にいると、やはり言葉の端々にそういう気持ちが出てしまいます。
 私がほかの専門家に口を酸っぱくして言うのは、「嫌わない努力を精一杯してください」ということです。
 嫌いそうになったら、それは距離が近いということなので、もっと離れてルールをしっかり作ることが必要です。「これはできるけどこれはできない」「これをされたら私は嫌です」ということを、しっかり伝えておきましょう。
 一人ひとりできることが限られているので、いろいろな人にかかわりを持ってもらい、チームでケアしていくことも大事です。
 そうでないと、「あの人は誰にも心を開かない。だから私しかいない」という感じになりがちで、それは自分の首も相手の首も絞めることになります。それは間違いであり、一番危険なことなのです。
 人は、相手が大切な人であればあるほど、客観的に見られなくなります。
 でも、大切な人であればあるほど、私たちにできることは相手の鏡になることぐらいです。
 つまり、「あなたは、私にはこう見えるの」とか「こんなことがつらいんだね」とか「私は、こうされるとすごくつらい」とか、自分の姿が人にどう映っているかを教えてあげるぐらいしか、できることはないと思うのです。
 言われた本人は、そこでやっと気づくチャンスが与えられるのです。

こんな「思いやり」は逆効果

 そこで大切なのが、父性と母性です。最近の日本のメンタルヘルスの考え方は、母性に偏っていると感じています。やっていいことと悪いことを言わない、過保護な母親みたいになっているのです。上司も同僚も家族も、みんなそうです。
「うつの人に頑張れと言ってはいけない」という話はよく聞きますよね。
 そういう感じで、「患者にあれをしてはいけない、これをしてはいけない」という意識がとても強いのです。だから、「いいよ、いいよ」「そうね、そうね」と受け入れて、それが腫れ物に触るような感じになっているのです。
 もしかしたら、あなたにも経験があるかもしれませんね。
 でも、患者さんが一番つらいのは、そういう対応をされることなのです。
 自衛隊で、私のカウンセリングルームに行列ができたり、ほかの契約先でも同じ現象が起きたり、かかわっていた中学校でも子どもたちからすごく支持してもらえたのは、私が厳しいからだと思います。
 自分自身、かつてどん底まで落ちて、みんなに腫れ物に触るようにされてつらい思いをしました。だからこそ、今苦しんでいる人が間違った行動をとっているときは、「そのままだとダメになるよ」とはっきり言うのです。

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イヤな気分をパッと手放す「自分思考」のすすめ

玉川真里

自衛隊初の現場の臨床心理士として、トップの利用率と9割の復職成功率を誇り、これまで3万人以上の心を解放してきた玉川真里氏が、落ち込みから立ち直るメソッドをわかりやすく紹介します。『イヤな気分をパッと手放す「自分思考」のすすめ』をcak...もっと読む

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yomimonocom 「自分自身、かつてどん底まで落ちて、みんなに腫れ物に触るようにされてつらい思いをしました。」 元自衛隊の臨床心理士・玉川真里さんの連載「イヤな気分をパッと手放す「自分思考」のすすめ」 第43回「」を公開! https://t.co/V2lssyjVsN 9ヶ月前 replyretweetfavorite