もらいうつ」を防ぐための二つのポイント

自衛隊初の現場の臨床心理士として、トップの利用率と9割の復職成功率を誇り、これまで3万人以上の心を解放してきた玉川真里氏が、落ち込みから立ち直るメソッドをわかりやすく紹介します。『イヤな気分をパッと手放す「自分思考」のすすめ』をcakesで特別連載!(毎週火曜更新)

第5章 あなたの大切な人がうつ状態になったら

「もらいうつ」を防ぐための二つのポイント

 大切な人がゆううつそうにしている。イライラしたり落ち込んだり、急に怒ったりすごく甘えてきたり、心の波が激しいように見える。
 そういうときは、そばにいる人が元気でいることが一番です。
 まず、自分に向かって「余裕ある?」と聞いてみてください。
 私のところへは、だいたい半分ぐらいの方が、誰かほかの人のために相談に来ています。夫や妻、部下、子どもの心の不調を心配しているのです。
 そういう人たちにいつも言うのは、「あなたが幸せであればなんとかなる」ということ。自分に余裕があれば、何かしてあげられます。でも多くの場合、余裕がなくなってしまうのです。共倒れ、「もらいうつ」になるケースがほとんどです。
 私のところに来るときには、もう相手を嫌いになっているか、困っているか、悩んでいるかのどれかなのです。悩んで悩んで、それで相談に来るのです。それでは、相談に来る人も本人もつらいですよね。
 もらいうつの事例は本当にたくさんあります。家族が気を遣って不調になることもあれば、職場の人も、気を遣いながら仕事面でもカバーするので、オーバーワークになってうつになることがあるのです。
 もらいうつを防ぐために、必要なことが二つあります。
 ひとつは、相手との適切な距離を保つことです。嫌いだと感じたり悩んだりしたら、それはもう距離が近すぎる証拠。自分の手に負えなくなっているということです。
 もうひとつは、できることとできないことをはっきりさせることです。相手のためにしていることは、自分が本当にやりたいことなのか? そこを明確にしましょう。
 自分がやりたいことをやっているときは、さほどイライラしないし、プチ優越感が生まれたりしているはずなのです。
 だから、自分にできること、できないこと、相手にできること、できないこと、その中で折り合いをつけていくことが大切です。そうすると「役に立てる感」があるので、うれしさも感じるし、心が壊れるところまでいきません。

人のためにできることには限界がある

 第4章で、うつから復活していくには、とことん落ちるところまで落ちる、底打ち体験が必要だというお話をしました。
 それが「あきらめる」という段階に入るために必要なことだからです。
 ところがそのときに、まわりが心配して手を出してしまうことがあります。
 自分の大切な人がろくにものを食べなかったり、寝床から出てこなかったり、泣いたりしていたら、たしかに心配で放っておけなくなりますよね。
 でも、そこでこらえなくてはいけません。
 やっと落ちるところまで落ちて、あきらめるという段階にきたときに助け舟を出してしまったら、また「自分はできない人」と思ってしまいます。だから、まわりも見守らないといけないのです。
 私はこういう仕事をしているので、自分の限界をけっこうわかっているつもりです。自分がかかわっている人が死ぬ確率は、ものすごく高いと思っています。そもそも人間は死ぬものだから、誰が死んでもおかしくないのです。とくに「死にたい、死にたい」と言っている人とばかり、接しているわけですから。
 だからこそ私は、自分のできることをやって、自分の限界を知っておくようにしているのです。
 これは私にとっての「あきらめ」のひとつなのですが、私が守れる相手は「私」しかいないのです。それを多くの人はわかってないから、手を出したがるのです。
 閉鎖病棟ですら、お医者さんや看護師さんの目を盗んで亡くなってしまう人はいます。死のうと思ったらどこにでも死ぬチャンスはあるのです。これはもう運命なので、できることをやって、あとは見守るしかないと思っています。

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玉川真里

自衛隊初の現場の臨床心理士として、トップの利用率と9割の復職成功率を誇り、これまで3万人以上の心を解放してきた玉川真里氏が、落ち込みから立ち直るメソッドをわかりやすく紹介します。『イヤな気分をパッと手放す「自分思考」のすすめ』をcak...もっと読む

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