強くなるには「いい負けを重ねる」必要がある

プロ棋士の遠山雄亮さんに、「将棋のルールは知っているけれど、どう指したらいいかわからない」というひとに向けて、将棋のエッセンスを教えていただくこの連載。第4回目は、どうしたら相手を「詰み」に追い込めるかという話を中心に、「詰み」にまつわる勉強法もお伝えしていきます。

自ら負けを認められるようになったら初心者卒業

将棋は「詰み」に追い込まれたほうが「負けました」と言って負けを認め、ゲームが終了します。
このように自ら負けを認めるゲームはかなり珍しいと思います。
前回、「持ち駒を使える」という将棋のルールが日本の文化を反映していると書きましたが、この潔さもまた日本の文化と言えそうです。

とはいえ、初心者のうちは、「詰み」に追い込まれる前に、相手の飛車や角のききに気が付かずに玉を取られて負ける、ということが起こりがちです。なので「詰み」に追い込まれて負けを認める、という工程が踏めるようになったら、初心者卒業の一歩と言えます。

今回はどうしたら相手を「詰み」に追い込めるかという話を中心に、「詰み」にまつわる勉強法もお伝えしていきます。

さて、「詰み」とは、前回説明した通り、次に玉を取る状態である「王手」で、かつ相手が「王手」を回避する手段がない状態です。この状態に追い込めば勝ちになります。逆に自分が「詰み」に追い込まれればそこで負けとなります。

相手の目の前にボンと金を置いてひれ伏せさせる

それでは第3回の宿題を再掲します。 持ち駒の金を使って「詰み」に追い込む一手を探してもらう問題でした。

【図1】

金をどこに打てば、「詰み」になるでしょうか?

正解は玉の目の前です。

【図2】

相手の玉の前に金を打つと「詰み」に追い込めるのです。

確認していきましょう。まず「王手」になっています。
この金を玉で取られても竜で取り返せます。
玉が逃げようにも、どこも金の動ける範囲です。
よって「王手」を回避する手段がないため「詰み」となります。

相手の玉の前に金を打って「詰み」に追い込む形を「頭金」と呼びます。
玉の頭に金を打つ、そんなイメージです。
相手の大将の目の前にボンと金(かね)を置いてひれ伏せさせる、そう覚えるとよりイメージがわきやすいでしょうか。

この「頭金」は応用範囲が広く、下の図3のような形でもすべて「詰み」です。

【図3】

銀・桂・香・歩は成ると全て金と同じ動きなので、成った駒が玉の前に来ても「頭金」と同じことになって「詰み」です。下の図4のとおり、竜と馬でも金の代用が可能です。

【図4】

ここで大切なことは、2枚の駒で協力していることです。
どんなに強い駒でも、基本的に1枚では相手の玉をつかまえられません。

将棋の上達が早い人は将棋の本質を理解している

「頭金」は将棋アプリ「ひよこ」と対戦するときに覚えておくと役立ちます。
10枚落ちなら飛車と角を成って、どちらかを玉の前に持っていき、それを取られても取り返せる格好ならば「詰み」です。上の図4はまさにその典型です。

8枚落ちなら相手の金を取って、その金を最後に使って「頭金」にすればいいのです。
第3回で述べたように、金は「詰み」に果たす役割が大きく、「金はトドメに残せ」という格言もあるくらいなのです。

「詰み」は将棋の本質です。当然ですが、将棋は相手の玉を先に取ったほうが勝つゲームです。自分の玉を気にしないとすれば、終盤の最優先事項は相手の玉をつかまえること。そのために必要な技術がこの「詰み」なのです。

私の経験からすると、将棋の上達が早い人はこの本質を理解しています。
そしてその「詰み」に特化した問題を「詰将棋」といいます。
詰将棋は最強の将棋筋トレで、上達には欠かせないものです。

ここで詰将棋の問題を出します。1手で相手の玉を「詰み」に追いこんでください。

【図5】

ここまでの話を理解できていれば難しくないはずです。

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大人の教養としての将棋入門

遠山雄亮

テレビ・ネット中継なども盛んに行われ、広く人々の知的好奇心を刺激する頭脳ゲーム、将棋。先読みや判断力が求められる将棋は、思考力を鍛える抜群のトレーニングにもなります。この連載では、「将棋のルールは知っているけれど、どう指したらいいかわ...もっと読む

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