※ 『週刊ダイヤモンド』2019年6月15日号より転載(肩書・数値などは掲載当時)
Photo by Masaki Nakamura
2019年4月10日、生命保険会社42社が集まった拡大税制研究会は、参加した関係者の多くが安堵の表情を浮かべていた。
その2カ月前、同じ会合の席で国税庁は、新種の節税保険(法人定期、経営者保険)が登場しては、通達で厳しく規制してきた経緯を踏まえて、「業界とのいたちごっこを解消したい」「個別通達を廃止し、単一的な(資産計上)ルールを創設する」と表明。
さらに新たな税務取り扱いのルールは、既契約についても影響が及ぶことをちらつかせていたが、4月の会合で「遡及はしない」と伝えてきたのだ。
既契約遡及となれば、業界が大パニックに陥ることは目に見えていた。
期待していた節税効果がなくなることで、中小企業からの解約が相次ぎ、果ては企業に販売した税理士などの代理店は早期解約によって、受け取った手数料を保険会社に返す必要に迫られかねなかったからだ。
遡及なしが決まった4月10日の夜は、至る所で酒宴が催されたが、その数日後、浮かれたムードが一気に消し飛んだ。
国税庁が示した法人税基本通達の改正案を読み込んでいくと、あることが見えてきたのだ。
それは、企業経営者に絶大な支持を得ていた医療保険の短期払いスキームが、従来のようには提供できなくなるかもしれないということだった。
どういうことか。多くの生保は「福利厚生の確保・充実」という名目で、企業経営者に向けて医療保険を販売している。
さらに、保険料を支払う期間を2年や5年などに短期化させ、時に数百万円に上る保険料を、一気に全額損金として法人が処理するというスキームを組む場合があるのだ。
関係者によると、一定の節税効果に加えて、契約期間の途中で名義を法人から個人に移せば、保険料をほとんど個人で負担することなく、終身の保障だけを経営者に移すことができるという。
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