王室に求められることを理解できないアメリカ人

海外経験豊富な元国連専門機関職員の@May_Roma(めいろま)さんは、自国に王室がないアメリカ人はイギリス人がハリーとメーガンの離脱で激しく怒る理由を理解できないと述べます。


前回のコラムではイギリス人がハリーとメーガンの離脱で激しく怒る理由を理解できないと説明しましたが今回はその続編です。

アメリカ人とイギリス人は怒りのポイントが違うのです。

以下は次回の続編で、イギリス人が怒りを感じるポイントです。

3.イギリス人はアンフェアなことを嫌う

イギリス国民の怒りのボタンは、病気や災害など物理的原因で弱っている人に対して攻撃することです。

女王様は93歳という超高齢で、今回の発表があった直後に自らランドローバーを運転して2日連続で狩りに行くほどの元気がありますが(彼女はストレスが溜まると銃撃に行きます)夫のエジンバラ公は最近具合が悪く病院を出入りしています。

お爺さんが具合が悪いのにこのタイミングでやらんでもええやん、というのが国民の合意です。

ハリーとメーガンはフェアの精神に反すると怒っているわけです。

紳士淑女たるもの、弱いものに配慮できなければならない。

このフェアプレーの精神は紳士のスポーツであるラグビーを見た方にはおわかりになるのではないでしょうか。

労働者階級向けのサッカーでは反則や怪我したふりをして敵を出し抜くことをやりますが、ラグビーではそういった狡猾さは許されません。ガチンコ精神、フェアプレー、ノーサイドの精神であります。今日の敵は明日の友です。敵とは同じ条件で戦う。お互いの健闘を称え合う。

敵に塩を送る精神、それこそがイギリスの紳士道であり、王族たるものは紳士階級の手本でなければなりません。

これはまさに日本の武士道と同じです。

ところが弱っているエジンバラ公を尻目に自分達のワガママを通したハリーとメーガンには騎士精神、武士道がない。

これは王族として全く恥ずべきことで、イギリス国民は激怒しています。

4.イギリス人は礼儀を重視する

しかも離脱発表をした日は兄嫁のケイトの誕生日。誰かの誕生日に悪いニュースを届けることはイギリスの儀礼上最悪のことです。

これは「あなたが死ぬほど嫌いです」と言うことと同じです。

さらにクリスマスは本家に行きませんでした。イギリスのクリスマスは日本のお正月と同じです。イギリス王室は旧家の最高峰です。そんな家のクリスマスをぶっちするというのは相当な勇気がいることです。

またメーガンが王室入りしてから、一般人と気軽に話したりサインをする、舌をぺろっと出した写真が報道される、王室には相応しくない写真をメディアに自ら露出する等王室のプロトコルを守らないといった儀礼違反がありました。

王室に限らずイギリス人は権威や礼儀を重視しますので、これはとても嫌がられました。

日本でも皇族方や武士は「威厳のある振る舞い」をするのが求められるのでわかりますね。イギリスだって同じなのです。王族は単なる芸能人ではありません。

5.アメリカ人の怒りのポイント

一方アメリカは、欧州から逃亡してきた人々が、王政や権威を否定することで作った国で、新しい国の上に、多人種、民主主義が国の基本になっている。

そのため彼らは人種差別や民主的ではないことに対して怒ります。

その多くは実は表層的で、実は根強い差別や非民主主義的なことが山のようにあるわけですが、しかし一応怒ることが社会的な合意になっています。

イギリスの場合は、前回のコラムでも述べたように、公共財の乱用、礼儀の一線をこえること、フェアでないこと、マナーと礼儀が重要です。

人種差別はあまり重要ではあません。アメリカに比べると人種問題に関しては粗野で無知な感覚もあります。

これはイギリスが移民国家ではなく、外国人が大量に入ってきたのは戦後の労働力不足と旧植民地解体が契機で、ここ40年ほどの話だからです。これは歴史が違うからどうしようもありません。

またイギリスに住んでいるアフリカ系の人はカリブ海の旧植民地から労働力不足で「招聘」された人達で、奴隷ではありません。

もちろん差別はありますが、アメリカほど激しい人種闘争や公民権運動はありませんでした。(ただしデモや闘争がなかったわけではありません)

最初から空港職員や地下鉄職員、バス運転手等の安定した給料をもらえる公務員や手に職系の熟練労働者だった人も多く、貧困層ではありません。ですからイギリス人はアメリカ風の人種差別云々の話をされてもピンと来ない人が多いです。

一方で異人種であっても、イギリス的なマナーや言葉を身に着けていて品格がある人は歓迎されます。これは大英帝国であった名残です。

ですから、イギリスの上場企業の社長の少なからぬ人は外国人ですし、大学教員や医師、弁護士、政治家なども有色人種の人が少なくありません。

ただしその人々の多くは、ある意味堅苦しいイギリス的な儀礼に沿って生活し、行間を読ませる英語を読み書きし、上品な発音の英語を話します。子供達は私学に送ってイギリス的な言葉使いやマナーを身に着けさせます。ですからロンドンや郊外の私学の生徒の多くは移民2世や3世です。

その代表はフレディ・マーキュリーやジョージ・マイケルです。彼らは「イギリス人のアーティスト」として扱われ人種的背景は話題になることすらありませんでした。

特にフレディに関してはペルシャ系だということすら知らなかった人も多いのです。彼は幼少期からインドの英国式寄宿舎付きの学校に通っていたので上流階級に近い英国英語を話すのです。

非常に面白いのはイギリス人と同じ言葉を話すアメリカ人の方が、日本人よりも、イギリスの王室や礼儀を重視する感覚を理解できないことです。

彼らは感覚としてわからないのです。

日本人の方がイギリスの金銭感覚、空気を読む、王室にや伝統に対する感覚は理解しやすいでしょう。

例えば日本人は「イギリスのこの英語表現は京都」といえば一言でその真意を理解します。ところがアメリカには京都に該当する「文化」がないので暗黙知で感覚として理解ができません。

アメリカには「老舗」もないし「ヤクザの姐さん」もいない。

だから王室が理解できないのです。

その一方でアメリカほど王室が好きな国はない。映画やドラマにはやたらとプリンセスが登場するし、イギリスにはものすごい数のアメリカ人が観光に来ます。

イギリス王室の一番のお客はアメリカ人なのです。

しかし彼らには王室は芸能人の様なもので「消費財」です。

生粋のアメリカ人なメーガンとそのPRチームは王室を「消費財」として理解しているようですが、その様な感覚がイギリス人を怒らせているということは理解できないようです。

ひたすら「人種差別だ」というアメリカ的なロジックで自分達を有利な立場に置こうとしていますが、それは王室とイギリス人の怒りを増幅するだけです。

ケイクス

この連載について

初回を読む
世界のどこでも生きられる

May_Roma

海外居住経験、職業経験をもとに、舌鋒鋭いツイートを飛ばしまくっているネット界のご意見番・May_Romaさん。ときに厳しい言葉遣いになりながらも彼女が語るのは、狭い日本にとじこもっているひとびとに対する応援エールばかり。日本でしか生き...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

May_Roma イギリス在住のMay_Romaさんが「日本に縛られない生き方」を語る国際派コラム。 約5時間前 replyretweetfavorite

paaaman_himajin |世界のどこでも生きられる|May_Roma|cakes(ケイクス) 「イギリスのこの英語表現は京都」 ここで なるほど ってなった https://t.co/IGpBILJHfH 約17時間前 replyretweetfavorite

500tomohiro 日本もやらかしてパパ・ママに娘と彼氏叱られて彼氏逃げたからな…→→ 約17時間前 replyretweetfavorite

May_Roma 海外経験豊富な元国連専門機関職員の @May_Roma(めいろま)さんは、自国に王室がないアメリカ人はイギリス人がハリーとメーガンの離脱で激しく怒る理由を理解できないと述べます。 https://t.co/5H6dLX2L7Q 1日前 replyretweetfavorite