梶原治樹(扶桑社)
 企画の生みの親に会いに行く

2001年の『週刊SPA!』に載った机の特集。それは、辣腕経営者から名うて評論家の机を取材した、いま読んでも刺激的なものだった!  その企画を生み出したのが、現在は扶桑社で販売部をとりまとめながら出版業界の勉強会なども取り仕切る梶原治樹。今回、cakesが「クリエイターズ・デスク」の連載を開始するにあたって、まずは企画の生みの親である氏とその机を取材させていただいた。

 ものが整然と並んでいる人は几帳面、とっちらかっている人は大雑把。机とは、100人いれば100人それぞれの個性があり、その個性は主の性格を反映している—かどうかはわからないが、机がその人のある一面をむき出しにしているというのは間違いない。今回始まったこの「クリエイターズ・デスク」という連載は、文筆家、アーティスト、企業経営者などの著名人の机を見せてもらい紹介していくもの。連載に入る前に、ある方の机を紹介しようと思う。

 cakes(ケイクス)には、「メディア」という雑誌などからの配信記事がある。cakesがこの機能を取り入れようと思った理由の一つは、雑誌記事はそれがどんなに素晴らしいものでも、発売してしばらくすると埋もれてしまうこと。雑誌記事というものは、連載でもない限り、あとでまとめて書籍化されることもほとんどなく、読み返されることもあまりない。

「オフィスという公共空間の中に存在する、パーソナルな場所、机」
かつて、こんな文言から始まる雑誌記事があった。雑誌名はいわずとしれた総合情報誌『週刊SPA!』。「あの凄腕ビジネスマン、クリエイターの机が見たいーっ!!」と題されたこの特集(2001年9月26日号)は、実に11年も前のもの。カルロス・ゴーン氏や山形浩生氏、オン・ザ・エッヂ時代の堀江貴文氏など、現在もその名を轟かす凄腕たちの机が紹介されている。

 こんな名企画が埋もれてしまってはもったいない。この企画を蘇らせるには、cakesという媒体こそぴったりなのではないか。そのために連載のご許可をいただこうと、このページを作った生みの親に会いたくなった。

 その生みの親は、梶原治樹さん。現在は扶桑社販売部担当部長を努め、「でるべんの会」という出版社の枠を超えた勉強会を主催する、出版業界では知られた方だ。せっかくなので、第0回はこの企画を考えた梶原さんの机を見せてもらおうということで、梶原さんを訪ね扶桑社に伺った!

—はじめまして! 早速ですが、梶原さんはどういったきっかけでこの企画を思いついたのでしょうか?

梶原治樹(以下、梶原) もともと僕は、こういった文具や整理術が好きなんですよね。当時の『SPA!』編集部でも、唯一机の板が見えるのが僕だったくらいで(笑)。手帳や本棚や書斎の特集というのは割と昔からあるんですが、机ってないなあと思ったのがきっかけです。

 それともうひとつ大事なのが、編集という仕事をしていると、好きな人に会えることが多いから、いろいろな人の話が聞きたくなるんです。そんな時に、直接話を聞くよりも、何かに語ってもらいたいと思ったんです。直接の言葉ではなく、この机の特集のように形で見せたいなあと。

—まさにそのとおりになった企画ですね。机ひとつとっても、こんなにも人の個性が出るのかと思いました。

梶原 そうですね。人選も、カルロス・ゴーンさんや『グランツーリスモ』を作ったゲームクリエイターの山内一典さん。山形浩生さんも初の単著『新教養主義宣言』(晶文社、現在は河出文庫)を出してしばらくたった頃で、僕がぜひ机を見たいと思ったんです。あとはオン・ザ・エッヂ時代の堀江貴文さん。まだビットバレーのブームが終わったくらいのころで、翌年くらいにライブドアになってCMを打ち始めるころだったので、世間的には無名でしたね。上司からも、「俺、ITとか興味ないからよく知らん」なんて言われた記憶があります。

—梶原さんの中で、この企画について他に覚えていることはありますか?

梶原 実は『SPA!』時代の自分にとって、一番と言っていいくらい思い入れのある企画なんですよね。思い入れのあるページはいくつかありますが、この特集が一番世間の興味と自分の興味のバランスが取れた企画だった気がします。

 それと、この号を徹夜で作っていた時、壱岐真也さんという当時の『SPA!』の名物デスクに「梶原、ちょっと来い!」って呼ばれたんです。なんだろうとビクビクしながら行ったら、「すげーおもしれーな!」って。深夜にそう言われたのを、今でも覚えていますね。それだけでも、編集をやっていて良かったと思えた企画でした。

—そんなことがあったんですね……。では実際に、机を見ながらお話を伺わせていただきたいと思います!

梶原 そんなに片付けているわけではないですけどね(笑)。

梶原 普通、電話は利き腕と逆の手で取るものなので、右利きの人は左側に電話を置くのがセオリー。でも僕は左利きなんですが、こんな形で右手で受話器を持って左耳に当てるのが癖になってしまっています。それで、空いた左手でメモを取るわけです。いろいろ配列を試した結果、この形に落ち着きました(笑)。

梶原 書店などから注文の電話がたくさん来るので、それをメモしてPC上で登録する作業を紙のメモでやっていると、結構な量のゴミが出るんです。だから書いてもさっと消せるブギーボードは便利ですね。

 人に渡すメモは、その奥にある付箋を使っています。これは、ステーショナリーショップのデルフォニックスで買った、ビューローというブランドのものです。新しい文房具は、ちょこちょこ買って試していますね。

梶原 このクリアファイルは、赤が自分の担当している『ESSE(エッセ)』関係の資料、青がムック関係の資料、緑が書店や取次関係の資料、黄色が業界団体やセミナーの資料に…、と業務の種別ごとに分けていて、さらにプロジェクト単位でクリアファイルを分けています。ここの棚以上に資料が増えたら捨てる、というのを自分ルールにしていますね。

梶原 もう十年以上このやり方を変えていません。付箋をセロテープで貼るだけっていう簡単な仕組みだから持続性が高いんでしょうね。

梶原 名刺の整理だけがすごく苦手なんです。もう、もらった順に突っ込んでいるだけ。勉強会をやっていると、大体月に100人くらいの人に会うんですが、職種がバラバラなので整理のしようがない。今は大体仕事でもプライベートでもGmailを使っているため、メールを検索すれば必要な連絡先の9割ぐらいはわかるので、名刺は必要ないっちゃあ必要ないんですけどね。でも、名刺ってなかなか捨てられませんよね。ある意味、自分の財産みたいなもんなので。

 とまあ、僕の机はこんなところですかね。

—ありがとうございました!

梶原 では、連載がんばってください!

 

 この企画の生みの親だけに、非常に有機的な机を作られていた梶原さん。ビジネスマンにとって、どうやって名刺を整理するかは常に悩みの種。ましてや、月100枚という膨大な数の名刺を管理する方法なんて、誰も想像がつかないだろう。梶原さんがきちんとファイリングしているだけでも、見事としか言いようがないのだが……。それを「苦手」と言い切るところに、梶原さんの机整理へのこだわりが見えた気がした。理路整然とした話し方と同様に、非常に整理された梶原さんの机だった。

 といったわけで、「クリエイターズ・デスク」がスタート。記念すべき第1回は、現代美術家の会田誠さんです。こちらこちらからご覧ください!

(構成・大熊信)

ケイクス

この連載について

クリエイターズ・デスク

cakes編集部

あの独創的な仕事をしている人の机は、一体どうなっているの!?――そんな疑問や好奇心に応える連載が「クリエイターズ・デスク」。それぞれの分野で活躍しているクリエイターの机を覗かせてもらい、その仕事のスタイルについてもこってりお話をうかが...もっと読む

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