神功皇后の新羅親征①
九月十日、諸国に命じて船舶を集め、兵を訓練させました。そのとき、兵士の集まりがよくありませんでした。皇后は、
「これは必ず神の御心であろう」
とただちに大三輪社(おおみわのやしろ)※1を立て、刀(たち)と矛(ほこ)を奉納しました。すると、兵士が自然に集まりました。ここで皇后は吾瓮(あへ)の海人(あま)※2・オマロ(烏摩呂)に、西海に出て国があるか視察させましたが、国は見えませんでした。
そこで、磯鹿(しか)の海人※3・ナグサ(名草)を遣わして視察させると、数日して帰り、
「西北に山があります。雲が横たわりたなびいています。おそらく国があるのでしょう」
と報告しました。
そこで、出発する吉日を占うと、まだ日がありました。そのとき皇后は、自ら斧(おの)と鉞(まさかり)を取って全軍に言いました。
「士気を鼓舞する鐘や鼓の音の統一が取れなくなり、軍旗(ぐんき)が乱れれば、軍兵は整わないものだ。
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