コンビニ地獄

少ない裁量権、名ばかり経営者のオーナー

【本部の“圧力”にさらされ】
「加盟店さまとの共存共栄」「加盟店ファースト」……。本部が発する美辞麗句とは裏腹に、加盟店オーナーは本部からの有形無形の圧力にさらされ、過酷な労働を強いられている。


Photo:PIXTA

 「恐怖のあまり、言われた通りにすると約束しました。契約更新をしてもらえないと思いましたから」──。

 セブン-イレブンのある店舗を経営する伊藤稔さん(仮名)は、こう振り返る。伊藤さんの店舗の商品在庫金額は、月末になると減っていた。500万~600万円台で推移する在庫金額が、月末には、月中と比べて10万~90万円少なくなっていたのだ。フランチャイズ契約の更新を1年後に控えたある日のこと。セブン-イレブン・ジャパン(SEJ)本部の店舗指導員(OFC)から、「改善提案書」と題した文書を手渡された。

 そこで求められた“改善”とは、次のようなものだった。

金額列記した文書で在庫増やせと“提案”
加盟店は逆らえない

 文書では、過去数カ月間の月中と月末の在庫金額の差を列挙した上で、在庫金額を減らした月末は店頭に並ぶ商品が減り、「お客様に『品揃えが悪い店』というイメージを与えてしまうことも懸念されます」と指摘。一定の種類や量をそろえ、品不足を防ぐのは、「加盟店契約第24条にも定められておりますオーナー様の義務であります」と踏み込んだ内容で、“提案”というよりも、もはや“圧力”に近い書きぶりである。

在庫を絞れば「チェーンとしての信用低下にもつながりかねない」と指摘する「改善提案書」。Photo:DW

 一体どういうことか。これは、コンビニの会計システムに由来する。オーナーは、毎月の最終的な店の利益をいったん、「オープンアカウント」と呼ばれる会計システムに預ける。その上で、たまった利益の一部を毎月「月次引出金」として受け取り、生活費とする仕組みになっている。

 ところが、月末の在庫金額が多ければ月次引出金が少なくなり、逆に在庫金額が少なければ月次引出金が増える仕組みになっているのだという。そのため、余裕のないオーナーは月末の在庫を絞ることが多い。

 一方で、本部側は、常に商品が豊富な売り場を実現するため「集客につなげ、売り上げをアップさせましょう!」と加盟店を鼓舞する。とはいえ、コンビニ会計の特殊性を踏まえれば、実際に売れた商品が少なくても本部は粗利を確実に得られる半面、売れ残った商品の原価の大半は加盟店の負担となる。

 加盟店が仕入れを絞るや否や、本部が厳しく“指導”する傾向は、特にSEJにおいて顕著だといわれている。とりわけ、当時の伊藤さんのように、契約更新の時期を間近に控えていれば、「本部の心証を悪くしたくないという加盟店側の心理が働き、逆らいづらい」と複数のセブンの現役オーナーが本誌の取材に語っている。

 ただし、両者のやりとりは口頭で行われることがほとんどだという。そのため、「在庫を増やすよう強く求める文書が存在することは異例だ」と、ある公正取引委員会の関係者は指摘する。

 商品や資金の流れを本部に厳しく監視され、売れ残りは自らの負担になる。そこに人手不足という問題が降り掛かり、コンビニオーナーはまさに「三重苦」に苛まれているといえるだろう。立地や商圏に恵まれない限り、こうした苦しみと無縁ではいられない。

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週刊ダイヤモンド 2019年6/1号 [雑誌]

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ダイヤモンド社; 週刊版
2019-05-27

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「開いててよかった」のキャッチコピーで約40年前に誕生したコンビニ。今や全国5.5万店、11兆円市場へと膨れ上がった。急成長の裏側で、現場を支える加盟店の負担は限界に達し、24時間営業の見直しが迫られている。コンビニ業界が抱える構造的...もっと読む

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