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「では最後に④。キーワードは〝ずらす〟です」
「〝ずらす〟ことで工夫が生まれる……のか?」
もちろん〝ずらす〟という言葉の意味は知っている。しかしそれがなぜ工夫につながるのか、まだ翔太にはピンときていない。詩織は数列の授業を続ける。
「ではまた数列の話に戻ります。今度は、1から始まって2倍ずつ増えていく数列」
「2倍? えっと、1、2、4、8、16、……」
「そうです。では8番目までを全部足した、1+2+4+8+16+32+64+128はいくつでしょうか?」
「ちょ、ちょっと待て。暗算はちとキツいな……」
「ここは正攻法ではなく、いきなり工夫を試みるべきです。繰り返しますが、キーワードは〝ずらす〟です」
解き方を教えてしまっては意味がない。できれば自分で気づいてほしい。詩織はそう思い、じっと待つ。