雨宮ひとみ /halyosy
第2回 春
なかなか新入生が集まらない音浜高校合唱部。やきもきしている未来だが、そこへさらに部員減少の危機が?!
大ヒットボーカロイド小説『桜ノ雨』シリーズの第2弾『桜ノ雨 僕らが巡り逢えた奇跡』の一部を紹介します。シリーズ最新刊『Fire◎Flower』も発売中!

放課後になり、いつものように基礎練習から部活が始まった。まずは腹筋からだ。
「はーい。じゃあ二人組になってー」
この際、大体決まったメンバー同士が向かい合う。
「今日はあたしからやるね。鈴、足首おさえて」
「おっけー♪」
鈴とめぐはいつもの位置で素早く基礎練を始めた。この二人は一年生の頃から、良きパートナーシップが出来あがっている。
蓮と輝(コウ)はやはり同学年ということで、ペアを組むことが多い。
だけど今日に限っては、輝が日直のため少し遅れて来るとのことで、蓮は教卓の隙間に足を入れ、一人で腹筋運動をしていた。
「二十七、二十八……っ、に…じゅう…く…っ」
「蓮、こっちが終わったらアタシがおさえよーか? そこで一人はきついでしょ。しっかり固定されないし」
「あー…。いや……大丈夫」
「そう……?」
「ああ。毎朝、鈴乗っけて坂道のぼってるだろ? あれ、何気にいい筋トレになっててさ。実は中学のときより、かなりカッコイイ腹筋になってるんだぜ?」
触ってみるか? と蓮は鈴の腕を引っ張った。
「いいよ別に。蓮のそんなとこ、きょーみないし」
「そんなとことか言うな!」
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この連載について
雨宮ひとみ /halyosy
「もしも、初音ミクが女子高生だったら・・・」で話題となったボーカロイド小説『桜ノ雨』シリーズ。第三弾として、スピンオフ作品『Fire◎Flower』が8月28日に発売されました。
それを記念して、シリーズ第2弾にあたる『桜ノ雨 僕ら...もっと読む
著者プロフィール
脚本家、小説家。雑誌編集者を経てフリーの文筆家となる。脚本、小説、漫画原作、ゲームやドラマCDのシナリオなどを手掛ける。VOCALOID好きが高じてノベル『桜ノ雨 僕らが巡り逢えた奇跡』の執筆を担当することに。小説『Romeo×Juliet』(角川ビーンズ文庫)、『おんたま!』(ニコニコアニメチャンネル)他。
ニコニコ動画にてVOCALOID楽曲の投稿、また「歌ってみた」カテゴリでの活動をしているクリエイター。2008年2月に投稿した初音ミク楽曲『桜ノ雨』はネット界隈だけでなく、一般層にまでファンを作るほど大きな反響をよんだ。自身が立ち上げた「桜ノ雨プロジェクト」により、『桜ノ雨』を合唱できるように支援している。ボカロ曲だけでなく、歌い手などへの楽曲提供も行っている。