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「何となく、直感的なものでもいいのか?」
「ええ」
「たとえばもし給与が低い人が倍の金額になったとしたら、超嬉しいと思う」
「……」
「でも、年収1億円の人が年収2億円になっても、それほど嬉しさは変わらないような気が……もちろん俺にはそんな収入ないから想像でしかねーけど」
「収入額が大きければ大きいほど、増額に対する感動は少ないということですか」
「まあ、何となくな」
「つまり、関数で表すとy= xみたいなものだと」
「おい、次はルート(√)か……懐かしいけど意味、何だっけ?」
「本当に勉強していなかったのですね。xは二乗してxになる数のこと。ゆえに 4は2、9は3です」
淡々と語る詩織とは逆に、ルートという言葉だけで嫌悪感を抱いてしまい先に進めなくなるのは、やはり数学に強いアレルギーがある証拠なのだろう。詩織はまたもスマートフォンで検索し、y= xのグラフを翔太に見せる。