天才のつくり方

第23回】教育の本来の価値は、知識ではなくエモーショナルバリューだ。

最近耳にする「破壊的イノベーション」という言葉。それはアメリカのMITでもよく使われていて、茂木健一郎さんはいずれ教育にも起こると予見します。オンラインで世界の講義が受講できるようになったら、既存の教育は破壊されていくのでしょうか?

MITの石井裕は、会って1秒で具体的な話をする

茂木 MITで日本人の研究者何人かと会ったんだけど、まず所属を言う人がいるんだよね。◯◯大学の◯◯研究室から来た〜です、とかさ。おれは所属とか関係なく、研究内容が知りたいのに。石井裕(MITメディアラボ副所長)なんて、1秒目から具体的なことを言うよ。

北川 さすがですね。

茂木 石井裕は、タンジブル・ビッツ(身体で直接触れて操作できるデジタルデータ)の次にラディカル・アトムズっていうのをやっているんだって。タンジブル・ビッツはまだデータをタンジブル(実際に触れて)に扱うだけだけど、ラディカル・アトムズでは物質そのものを情報化して、変形したり、プログラムしたり、自由にmanipulation(取り扱い)できる世界を実現しようとしてる。

北川 なるほど。

茂木 原子レベルでね。それは今はまだ実現できないけど、100年後には当たり前になっているかもしれない。そういうビジョンを語っているんだよ。

北川 いいですねえ。

茂木 石井裕やその周りの人と話した時、disruptive innovation(破壊的イノベーション)という言葉をよく使っていたのが印象的だった。disruptive(破壊的)って、すごくいい言葉だと思う。破壊的といっても、ただ壊すんじゃなくて、新しいものが生まれることで、結果として既存のものが無くなったり劇的に変化したりするってこと。結果としての破壊なんだよね。まあ、ちょっと日本語で「破壊」って言っちゃうと壊す感じが強いけど。

北川 わかります、もっと全体をがらがらと揺り動かして変える、みたいなイメージですよね。

茂木 そうそう。揺らいでいくっていうかね。だから、日本の教育システムもテクノロジーが出てくることによって、自然と新しいものにとって替わっていくと思うんだ。他大学の講義をオンラインで視聴する、エッセイを機械採点する、カリキュラムを皆で共有する、ディスカッショングループをウェブ上につくる、そういうシステムが出てきて、事実上、既存の大学というものがdisrupt(破壊)される。それはもう、すぐそこまで来てると思う。

北川 そうですよね。

茂木 実はハーバードやMITでも危ないんじゃない? ひょっとしたら従来の形態のままではいられないかもしれない。

北川 ハーバードでは、むしろ教授陣が真っ先にその流れを受け入れてますね。彼らはありとあらゆるリソースを、自分自身の力で、そのつど組み合わせて勉強してきた人たちばかりです。本質しか見ていないから、別に全員がレクチャーに出席しなくてもいいと思ってる。必要な人だけ来ればいいと。むしろ自分は教えるより研究したいので、勝手に学んでくれればその方がいいじゃん、くらいの感覚ですよ(笑)。

茂木 なるほどね(笑)。

北川 ベストなレクチャーがバークレー(カリフォルニア大学 バークレー校)にあるんだったら、ハーバードの学生もそのレクチャーをオンラインで見て勉強すればいい、という考え。だから、最初にMITやハーバードが変わる可能性はあるでしょうね。

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天才のつくり方

茂木健一郎 /北川拓也

日本経済が停滞して久しい。一方で、アメリカではIT産業の新しい成功モデルがどんどん生まれている。この違いはどこにあるのか。 ここで登場するのが2人の天才。高校卒業後、8年間ハーバード大学で活動している理論物理学者・北川拓也。一方、1...もっと読む

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コメント

FFOnlineUser お勉強ってなんですかね? https://t.co/fUPDdhaQkx 3年以上前 replyretweetfavorite

nzmt_i2o3 読んだ。面白い。 4年以上前 replyretweetfavorite

naganagashiii オープンコースウェアでエッセイ機械採点…? 4年以上前 replyretweetfavorite

yaiask 13:28まで無料。大学のキャンパスは何のためにあるの? 答えは記事に→ 4年以上前 replyretweetfavorite