本来の力を発揮するのに必要な脱力の正体

試合中にやってくる一瞬のチャンス。それを逃さず、自分の力を最大限引き出すには、しっかりと体と心を脱力させる必要があります。現役日本代表にもドリブルを伝える岡部将和さんが、独自に編み出した「99%抜けるドリブル理論」のエッセンスをご紹介します。

2つの力み

読者の中には、練習ではうまくいくのに試合だとうまくいかない、大事なところで緊張して力んでしまう、といった経験をしたことのある方がいるのではないかと思います。僕自身も、そういった経験をたくさんしてきました。また、今までドリブルで指導してきた選手たちの中にも、同じような悩みを抱えている人がたくさんいました。

このように試合中に本来のパフォーマンスを発揮できない理由は、「体の力み」と「心の力み」にあると言えるでしょう。そして、これらの力みをなくすためには「脱力」が必要です。では、どのようにして「体の脱力」と「心の脱力」を行えばよいのでしょうか?

人間の筋肉のメカニズム

まず1つ目の「体の脱力」について、ご説明します。ドリブルを仕掛ける場面では、重いものを持ち上げるような力を使うのではなく、一瞬で相手を抜き去るようなスピードや瞬発力が必要になります。

人間の筋肉はゴムと同じで、ゆっくり伸びる動きからは、ゆっくり収縮する力しか生まれません。逆に、勢いよく伸ばすと、ちぎれるのを防ぐために急速に収縮する力が生まれます。この動きを「伸張反射」と言います。

「伸張反射」では脳の指令とは関係なく無意識に筋肉が動くので、意識的に行動するよりも早く筋肉を動かすことができます。この伸張反射を起こすには、一瞬で筋肉に強い張力をかけることが必要です。瞬間的に強い張力が加わると筋肉が一気に伸縮し、高い瞬発力で動くことができるのです。

実はこの伸張反射を走る動作やドリブルに意図的に使うことができるのです。人は走るとき、地面からの反発力(床反力)を利用して走っていますが、この床反力と伸張反射を組み合わせることで、得られる力はより大きくなり、最も強い力で走り出すことができます。このとき、もしも体を脱力させずにガチガチの状態で地面をぐぅーっと長く押してしまうと、伸張反射が起きないので高い効果は得られません。できるだけ脱力の時間を長く、そして緊張の時間を少なくすることで伸張反射が生じ、高い瞬発力を出すことができるのです。

メッシやネイマールといった世界で活躍している選手は「脱力する技術」を持っています。ここぞというときの「グンッ」と一気に加速するような瞬発力は、筋肉の力を抜いた状態から、一瞬でエネルギーを溜め込み、それを一気に解放することで生まれます。自分が持つ瞬発力をここぞというときに最大限に出し切るために、意図的に体の力を抜いているのです。

そして、もうひとつ大切なのは「心の脱力」です。身体的な脱力は上半身や下半身の使い方をトレーニングすることによって身につけられるものですが、いくら身体的な脱力が完璧にできるようになっても、最後は「心の脱力」ができるかどうかがパフォーマンスに大きく影響します。

なぜ試合になると「心の脱力」ができなくなるのでしょうか? 皆さんは会社や学校で大勢の人の前で発表するときや重要なプレゼンをするとき、必要以上に緊張してしまい、声が上ずったりシドロモドロになってしまった経験はないでしょうか。これはサッカーでも同様で、「抜けないんじゃないだろうか」「自分より強い相手なのではないか」という不安な心理状態のときは、不必要に緊張したり力んでしまうものです。

心の脱力に必要なもの
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99%抜けるドリブル理論入門

岡部将和

ほぼ確実にドリブルでディフェンスを抜く方法があります。その方法と、それを実践するテクニックを身につければ、誰でもディフェンスを抜けるようになるのです。そうなったらサッカーはもっと楽しくなるはず。現役日本代表にもドリブルを伝えるドリブル...もっと読む

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コメント

vvvalther |岡部将和 @chanmar007 |99%抜けるドリブル理論入門 範馬勇次郎になりたい https://t.co/BMCAKn9Ws8 約1ヶ月前 replyretweetfavorite

Chuck_euoni 心の脱力は認知行動療法に通じるものがある。 約1ヶ月前 replyretweetfavorite