おひとりさまはマイホームをもつ必要性はない!? おひとりさまの住まいについて。その2

おひとりさまでも家族がいても、誰もが気になる、賃貸が得か持ち家が得か問題。経済評論家の佐藤治彦さんは、「マイホームである必要性はない」と断言します。おひとりさまだからこそ、家くらいは持ち家で、と思ってしまうものですが、さてその理由とは・・・?

住宅ローンというくびきを軽く考えてはいないか

マイホームを持つ必要性がない。
それが、おひとりさま人生の原則と考えています。

もちろん、経済的に余裕のある人、例えば、宝くじが当たった人や親からの遺産相続などで、何億円も金融資産を持っている人などは、住宅ローンを組む必要もないし、買うのも借りるのも好きにすればいいと思います。
なぜなら、不動産で経済的な損失を被っても、それが人生の大きな重荷にならないからです。

しかし、これからの人生で、お金ことに頭を使い、工夫して生きていくと覚悟している人はマイホームの購入は十分慎重にしたほうがいいです。
特に住宅ローンを組んでマイホームを購入するということは、この先の何十年もローンを返す義務を背負い、買った住宅となかなか縁を切ることができなくなることを意味します。
自分にとって現在の住まいが合わなくなった時には、売ればいいやと考えるのは危険です。
縁を切るのは離婚のように大変だからです。

少子化のいま、地方都市などの不動産は叩き売りしないと買い手がつかないことが多数あります。
首都圏でさえ場所や物件によっては、売却し手放すこともできないところが出てきているのが実情です。

マイホームは、住宅ローンを払い終わっても、賃貸の時には不要だった固定資産税が毎年かかります。
水回りなどは、何十年も経てば新しくしなくてはならないので、リフォームや修繕費なども必要です。
毎年のように上がる火災保険、地震保険、災害で住宅に損壊が起きた時にも自ら再建するのには新たな資金が必要です。

近隣にヘンテコな人がいても、賃貸なら引っ越せばすみますが、マイホームではそういうわけにもいきません。
いい仕事が見つかって引越しが必要になっても、考え方が変わって生活形態が変わった時にも、買ってしまったマイホームはあなたの影のようについてきます。
長いこと付き合っていかなくてはいけないのです。

経済力があれば、シニア層もオーナーに歓迎して貸してもらえる時代。
それが少子化日本の姿

賃貸住宅を嫌う人が、その理由に上げることのひとつに「ひとりものの老人には賃貸住宅など貸してもらえない」という人が未だにいます。
確かにかつてはそういう時代がありました。
70年以上前の太平洋戦争で多くの住まいが破壊され、戦後の復興で都市部での人口増加に対して住居が足りないという時代が長く続いたからです。
だから貸す側が住む人を選べる環境だったのです。

しかし、今はどうでしょう?

賃貸用住宅の空き家は現在846万戸(2018年現在)もあり、これは空き家のうちの51%ということです。つまり全体では1658万戸の空き家があるのです。
そして、2013年から5年間で、首都圏では東京都で31万戸、神奈川15万戸、千葉県14万戸、埼玉県12万戸も空き家が増加しました。
ですから、かつて賃貸住宅のオーナーが一番貸すのを嫌がった普通の外国人への賃貸(高収入のセレブな外国人は昔から賃貸住宅を借りるのに苦労はありませんでしたが)も普通になったのです。

そんな時代に、支払い能力のあるシニアに貸さないわけがないのです。

オーナーは、昔からシニアだろうが若かろうが、家賃を払えそうにない人には貸さないものでした。
支払い能力がなさそうなので貸さないことを、老人だから貸さないのだといってる人が実は多いのではないでしょうか?

将来のことをあまり深く考えても、悩んで不安に思うだけで仕方がない

20年、30年後の日本経済がどうなっているのか? 
適当な予想はいくらでも言えますが、あくまでも予想で、それが当たるわけではありません。
20年、30年後に私たちが受け取る公的年金がいくらになっているのか? その時の物価はどのくらい上がっているのか? 
誰もわかりません。
わからなければ計画の立てようがない。

そして、自分がいったいいくらの老後資金を確保して老人になるのか? 
健康なのか、介護が必要か? また、何才まで人生が続くのか? 
それもわからないのです。

社会や経済のことも、自分についてのことも、未来は皆目わからないのです。
しかし、生きている限り確実に未来はやってきます。

もしも、60歳の時に買った宝くじで5億円当たったら、家賃5万円のアパートに住む必要はありません。
毎月20万円の家賃が必要な高級マンションに住むことも経済的には決して難しくはないはずです。
逆に思ったよりも物価が上がって、手持ちの貯蓄と公的年金ではいまのマンションには住み続けるのは無理があるなと思ったら、その時の経済力で住める物件を探せばいいだけです。


ライフスタイルを柔軟に変えられるかがカギ

そうです。
家賃が高いマンションも、安いアパートもいくらでもあります。

東京だけでなく、千葉や埼玉、神奈川の周辺県も考えてみてください。
シニアになって退職していれば、どこにだって住むことは可能です。

私自身は、一生に何年かは他の府県に住んでみたいとも思っています。
沖縄、長崎、福岡、京都、石川、宮城、新潟、長野、山梨など住んでみたいところが山ほどあります。
ロンドンとニューヨークには住んだことがありますが、バンコクなどの東南アジアにも一度は住んでみたいとも思っています。

私はこう思うのです。
将来の自分と社会の経済状態によってそのライフスタイルを柔軟に変化させていくことを受け入れることが、さまざまな不安や問題の解決のカギだと思うのです。

いやそれしか方法はありません。

それなのに、私は目黒区内の60平米以上の高級マンションにしか住みたくないとか、横浜や湾岸エリアのタワーマンションの15階以上の見晴らしのいいところ、などと固執すると、今だけでなく将来のあなたのお財布は破綻してしまいます。
そこに住み続けることに固執することによって、他の生活や楽しみに回すお金が減ってしまって、いびつな生活になってしまいます。

住まいにこだわると、他の生活が貧弱なものになる。

将来、世の中がどうなっていようと、自分のライフスタイルを維持できるようにとお金の準備をしようとすると、相当のお金を貯めこんでいかなくてはいけません。
ですから、いまの生活を切り詰めていこうとする。
友人にお祝いをあげたり、気に入った店に外食に行ったり、映画やコンサート、旅行に行くことも我慢しなくちゃならなくなる。
住まいのために思い切り我慢しなくちゃいけない。

いまは経済的な余裕が少しはあるのに、それらを将来のためにと全部貯蓄に回してしまう。
それは賢明なことでしょうか?

あなたの人生で、今が一番若い

忘れていただきたくないことがあります。

それは、あなたのたった一度の人生の中で、今が一番若いということです。
あなたが30歳だろうと、50歳だろうと、今が一番若い。
その若い時に楽しまなくて、いつ楽しむのですか?

もうすぐ60歳だからと言う人がいます。そういう人は、20年前の40歳の時にも、もう40歳だと焦っていませんでしたか? 
60歳の今から思うと40歳は相当若いじゃないですか。20歳の時にも、15歳の時と比べると、おばさんになってしまったなと思ったのではないでしょうか?

もう一度申し上げます。

将来のためにと山ほど我慢して貯蓄をしたとしても、その金額で20年後、30年後、あなたが思い描くような生活ができる保証はどこにもないのです。
そんなわからないものに対して、やたら我慢するのはやめておいたほうがいいです。
もちろん、貯蓄がまったく必要ないなどと申し上げるつもりは、毛頭ありません。我慢し過ぎは良くないですと申し上げているだけです。

人は変わるもの。
これからの人生で何が起きるかわかりません。
ひとりで人生を歩んでいたのに、一緒に住む人ができたり、また別れてみたりするものです。
ペットを自分の家族のように迎えたけれども、そのために住まいを変える必要が出てくるかもしれません。
将来の自分は、今と同じような価値観を持ち続けているかどうかということもわからないのです。

そして現実問題として、老人ホームや介護施設に入る必要があれば、マイホームを持っていても、もはやそこに住むことはできません。
終末期は多くの場合は病院で迎えます。相当の覚悟を持って、生きることより、自宅で死ぬほうがいいという選択をしない限り、住む場所を選ぶこともできなくなることだってあるのです。

住宅について考えるべきことは、あまり悩まないということ。あまり固執しないということ。
しなやかに対応する。その心構えを持つことです。
むしろ将来のことよりも、現在の住まいについてもう一度考えてもらいたいのです。

理想の住まいとは何か

あなたにとって理想的な賃貸住宅に住んでいるのかという問いかけです。
理想的な住まいというのは、贅沢な住まいということではありません。
合理的な住まいであるかということです。

例えば、週に6日は朝7時から夜8時過ぎまで働きに出ている人にとって、大きなリビングのある住まいは必要でしょうか?
休日にゆっくりするためにリビングがあったら気持ちいいのかもしれませんが、365日のうち50日のために、大きなリビングのある賃貸住宅にお金を使うのであれば、家の近くのおしゃれなカフェでゆっくりブランチを楽しんだり、エステの費用やスポーツジムの会費にしたほうが賢いかもしれません。

また、家で仕事をする人が多い人が、交通の至便なところに住む必要はどれほどあるでしょうか? 
交通便利さよりも、居住空間が快適なところを求めるべきだと思うのです。

もしかすると、いまの住宅は無駄が多いかもしれませんね。
それを考え直すだけで、将来のための貯蓄が始められるかもしれません。

その時に考えていただきたいことがあります。それは住宅政策のために国や地方は多くの税金を投入しているということです。
良質な住まいを安価で供給することは行政の一つの仕事だからです。
この安価というのが難しい。
安さを強調すると民間の賃貸住宅圧迫だといわれかねないので、あまり声高に宣伝していません。
しかし、安い賃貸住宅があるのです。

宝くじを買うなら、公共住宅に申し込んでみては?

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おひとりさまの家計経済学

佐藤治彦

「普通の人が老後まで安心して暮らすためのお金の話」「普通の人がケチらず貯まるお金の話」でシリーズほぼ12万部の経済評論家、佐藤治彦のおひとりさまと、将来おひとりさまになりそうな人が、直面する経済と生活の問題を真正面に取り上げて、その具...もっと読む

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コメント

080UxDiOnlJs3Eb お一人様じゃなくても共感できる考え方だし、勉強になる。 2ヶ月前 replyretweetfavorite

yagimal2177 言ってる事は分かるw https://t.co/7QXppyNkHh 10ヶ月前 replyretweetfavorite

SatoHaruhiko 連載中の「おひとりさまの家計経済学」。その住宅問題を考えるものをアップデートしました。よろしければご一読ください。拡散希望。#おひとりさま #住宅  https://t.co/CswedzoWMk https://t.co/WDk7LbvPSR 10ヶ月前 replyretweetfavorite