助けて」が言えたら、「助けて」の声が聞こえる

前回「初めての心療内科」の続きをお送りします。
心療内科で診療を受けることで、自身が講演会で子供たちに送った言葉がそのまま自分に跳ね返ってくることに気が付きます。
怒涛の最終章です。

結局心療内科からいただいた薬も合わず、数日後。就労支援を受けるのに必要な、医学的見地からの意見書を書いてくれたドクターに相談しに出向いた。この先生とは二十年くらいのお付き合いだ。

「その節はお世話になりました。でも、働くのもだんだん厳しくなりつつあって。心療内科からは、不安障害により休職を要す、なんていう診断が出たんですが、急な人手もない。幸い販売業務も少ない時期なので、今は週一で勤務させてもらっています。 休職を求める勇気もなくて……」

「確かにね。福本さんを含め、障害者が働くってまだまだ並大抵のことじゃないと。 大きなところなら、定期的な面談や異動とか部署転換とかある。人間関係や体力的に行き詰まっても対応してもらえる。でも、小さいところだと信頼できる、あるいはなんとなく安心できる人がいなくなると途端に厳しくなるよねー。それに職場って大きな声で自分の空気を瞬時に作れた人が勝ちみたいな……大変やと思うわ」

「はい……」 もっと助けてと言えればよかったんだけど。 うわっ、島根の子どもたちに話したことがそのまま自分の心に跳ね返ってくる。

「助けて」が言えたら、「助けて」の声が聞こえる

地震や水害、病気や事故、なにがあるかわからない毎日。特別、意識なんてしないだろうけど、みんな、助かっている命です。 だから、どうか自分を大事にしてください。 おばちゃんの仕事の一つに「中学生プロジェクト」っていうのがあります。 昼間、災害が起きたら……地域にいるのって中学生でしょ! 中学校がその地域の避難所になる場合も多い。なにかあっても、逃げにくい人はいる。そこで、 中学生に、お年寄りや歩けない人、目や耳が不自由な人と避難訓練してもらおうと、大阪府内の中学校で中学生と障害者がタッグを組んだ。

もちろん互いに初対面だし、一緒に行動するんだから楽しいこともある。嫌な思いをすることもある。でも、それは、お互い人間なんだからしかたがないと思 います。これまで大きな事故もなく、大ゲンカすることもなく続けてこられた。 やっぱり「中学生ってすごいんだ」って。 いろいろなおじさんやおばさん、中学生、それぞれの生きてきた知恵や工夫を聞き合うことはとても大事だって私は教えてもらっています。 知らない人と初めてのことをする。心に小さなかすり傷を負うくらいの失敗は まあ、どんまい。怖がらずに心の「?」を出してみてください。小さな失敗もたくさんしてください。それが「へー!」って発見できることになるって思うから。 おばちゃんも、いろいろな人にさまざまな場面で助けられて、今日はみんなに会いに来ることができました。 旅行会社のお姉さんにはとてもお世話になりました。 電車の乗り換えでは隣に座っていた人の手を借りました。旅館の人もとても親切にしてくれました。駅からここまでは校長先生が迎えに来てくれました。大阪で体調が悪かったのに、みんなに会って元気になりました。ありがとうございます。 あっ、おばちゃんには、のっぽな息子が一人います。中学校の先生をしています。でも、おばちゃんは、息子の生まれた時からのあれやこれやを知っています。 学校に行き、授業を見たこともない。ほんとに先生をしているのかなと時々思っ てしまいます(笑)。 そんな息子に「もし災害にあった生徒さんがいて、なにか言えるとしたら」と聞いてみました。 「今は生きてるだけでいい。僕でよかったら、いつでもそばにいる」と答えました。なんだか、おばちゃんはとってもほっとしました。きっと、ここにいる先生もこうおっしゃってくれると思います。「僕がいる。大丈夫」って。 そんなことはわかっていても、大人を信じるって難しい時もありますよね。私もです。それでも、なにかあったら、やっぱり「助けてー」っていうことが大事なんですね。危ない目にあったら、「助けてー」っていうこと。 それが、他の人の「助けてー」の声に耳を傾けられる人になるって、おばちゃんは、思います。

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

「障害マストゴーオン!」が本になりました。連載からさらにパワーアップした、魂込もった千夏節、ぜひお読みください。

障害マストゴーオン!

福本 千夏
イースト・プレス
2019-12-07

この連載について

初回を読む
障害マストゴーオン!

福本千夏

脳性まひ者の福本千夏さん。 50歳にして就職して、さまざまな健常者と関わる中で、感じた溝を語ります。

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

sakomakoharu 自分自身なかなかうまくできてないことだけれど、子らには必要なときにちゃんとSOSを出せるように育ってほしい、ほんとに。 |福本千夏|障害マストゴーオン! https://t.co/XMFWg0fsl7 10ヶ月前 replyretweetfavorite

hikarikkkkk これほんとそうだ... 10ヶ月前 replyretweetfavorite