書けるひとになる! 魂の文章術

窓辺の花」より「窓辺のゼラニウム」と書くほうがずっといい

書くことで、あなたの人生はもっと楽しくなる! 全米100万部超え、14カ国語で翻訳された、ロングセラーの名著がついに復刊! 自己表現したい/書きたいのに書けない/もっとうまく書きたい… そんなあなたに贈る「書けるひとになる! 魂の文章術」は何度も読みたくなる 楽しい文章読本だ。ベストセラー作家にして40年にわたってライティングを教え続けている著者自身や生徒たちの実体験を踏まえ、<どうすれば書けるか><書き続けられるか>を伝授する。

具体的に書こう。ただ「果物」と言うだけではなく、「それはザクロだ」と言うように、どんな種類の果物かを言うこと。どんなものにもその名にふさわしい威厳を与えよう。人間を相手にする場合だって、「おい、そこの女の子、ちゃんと並んで」と言うのは失礼だ。その「女の子」にもちゃんと名前がある(実際、もしその女性が二十歳になっているなら、彼女はれっきとした成人女性であって、「女の子」などではない)。物にもまた名前がある。ただ「窓辺の花」と言うより、「窓辺のゼラニウム」と言ったほうがずっといい。「ゼラニウム」というひと言が、読者の心により具体的なイメージを与えてくれる。そのひと言は、花の存在の奥深くまで浸透する。赤い花びら、陽光に向かって伸びる丸い緑の葉……窓辺の光景がたちまち目の前に浮かんでくる。

十年ほど前、私はまわりの木や花の名前を覚えることにした。植物図鑑を買い、それを手にボールダー〔コロラド州の町〕の並木道を歩いた。木の肌や葉や種を細かく観察して、本に出ている解説や名前と照らし合わせようとした。カエデ、ニレ、ナラ、ニセアカシア……。でも私はたいてい手を抜いて、庭で働いている人にそこに生えている植物の名を聞いていた。驚いたことに、人々の多くは自分たちの小さな土地に同居している生物の名を知らなかった。

物の名がわかると、私たちは現実にもっと近づくことができる。頭の中のもやが消え、大地と結びつくことができるのだ。通りを歩いていてハナミズキやレンギョウを見つけると、私はまわりの自然とより親しくなれた気がする。まわりにあるものに気づき、その名がちゃんと言える。このことは、私をしっかり目覚めさせてくれる。

ウィリアム・カルロス・ウィリアムズの詩を読むと、彼が草木や花にどれだけ通じていたかがわかる。チコリー、ヒナギク、ニセアカシア、ポプラ、マルメロ、サクラソウ、ブラックアイド・スーザン、ライラック……それぞれが完全だ。ウィリアムズは「自分の鼻先にあるものについて書け」と言っている。なにが鼻先にあるのか知ることはたいせつだ。ただ「ヒナギク」と言うだけではなく、こうして私たちが見ているいまの季節、その花がどんな状態なのかを描写すること。「ヒナギクが大地を抱いている/八月……葉の端が茶色になった/緑色のとがったさやが/黄色を鎧で守っている」。いつも感覚を研ぎ澄ましていよう。名前に対して、月日に対して、そして最後には一瞬一瞬に対して……。

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書けるひとになる! 魂の文章術

N・ゴールドバーグ,小谷啓子
扶桑社
2019-11-02

この連載について

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書けるひとになる! 魂の文章術

ナタリー・ゴールドバーグ

書くことで、あなたの人生はもっと楽しくなる! 全米100万部超え、14カ国語で翻訳された、ロングセラーの名著がついに復刊! 自己表現したい/書きたいのに書けない/もっとうまく書きたい… そんなあなたも、“書けるひと”になれる! 何度も...もっと読む

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