書けるひとになる! 魂の文章術

作品は愛情を得る手段ではない

書くことで、あなたの人生はもっと楽しくなる! 全米100万部超え、14カ国語で翻訳された、ロングセラーの名著がついに復刊! 自己表現したい/書きたいのに書けない/もっとうまく書きたい… そんなあなたに贈る「書けるひとになる! 魂の文章術」は何度も読みたくなる 楽しい文章読本だ。ベストセラー作家にして40年にわたってライティングを教え続けている著者自身や生徒たちの実体験を踏まえ、<どうすれば書けるか><書き続けられるか>を伝授する。

五年前、友人がマンハッタンのローアーイーストサイドで暴漢に襲われた。そのとき彼女は両手を上にあげて、すぐさまこう叫んだそうだ。「殺さないで。私は作家なのよ!」 この話を聞いたとき、私はずいぶん妙な反応だなと思った。「作家だと言えば生かしてもらえると、どうして思ったのかしら?」

物書きはよく混同する。書くことが生きていることの口実になると考えるのだ。生きるのに条件はいらず、人生と作品は別のものであるのに、物書きはそのことを忘れてしまう。また、承認や注目や愛情を得る手段として自分の作品を利用することもよくある。「私の書いたものを見てちょうだい。私がどんなにいい人かわかるから」。その人がいい人であるとしたら、それは作品を書く前からそうであるはずだ。

何年か前、私は自分の作品を朗読するたびに、まわりがどれほど気に入ってくれようと、きまって寂しく惨めな気持ちになった。私はそれを作品のせいにした。もちろん作品そのものに問題があったわけではない。私は当時離婚したばかりで、自分に自信をなくしていたのだ。心の支えが必要だったのは、私の詩ではなく、私自身のほうだった。私はこの二つを混同していた。自分と詩が別のものであることを忘れていた。私の詩は健康だったが、私自身はそうでなかった。治療を必要としていたのは私のほうだったのだ。これに気づいて以来、私は必ず友達を朗読会に招待し、「デートの相手」になってもらうことにした。私は彼にこう言った。「私が作品を読み終えたらすぐに私のところに駆け寄って、私を抱きしめて、きれいだとか最高だとか言ってちょうだい。今晩の朗読が大失敗でもかまわないの。とにかく最高だと言って」。その日の出来具合は一週間後にじっくり見なおせばよい。とにかく今晩だけは「最高だと言ってちょうだい」。

物書きである私たちは、つねに心の支えを必要としている。それならまず、自分自身がすでに一瞬一瞬支えられていることに気づくべきだ。たとえば私たちの足は大地に支えられ、肺には絶えず空気が出入りしている。心の支えがほしいときには、そこから出発しよう。窓から日光と朝の静けさが入ってくる。そこが出発点だ。それから友達のほうへ顔を向け、「あなたの作品が大好き」と言われるときのあのいい気分を味わおう。床や椅子がしっかり自分を支えてくれるのを信じるように、友達の言葉を信じるのだ。

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書けるひとになる! 魂の文章術

N・ゴールドバーグ,小谷啓子
扶桑社
2019-11-02

この連載について

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書けるひとになる! 魂の文章術

ナタリー・ゴールドバーグ

書くことで、あなたの人生はもっと楽しくなる! 全米100万部超え、14カ国語で翻訳された、ロングセラーの名著がついに復刊! 自己表現したい/書きたいのに書けない/もっとうまく書きたい… そんなあなたも、“書けるひと”になれる! 何度も...もっと読む

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