単純労働はどこへ? IT化の波【第3回】

どんな職場にも単純労働が存在します。今日は単純労働が機械に取って代わられる世界……。そんな世界がどんなところなのか、ちょっと考えてみましょう。

 どんな仕事にも、修行時代があります。私自身、就職したての頃にはコピー取りやファックス送付といった雑用を散々やらされたものです。ゴミ捨てに灰皿の掃除。先輩の机を水拭き。「くだらねえことやらせやがって……。」と思っていました。今考えてみると、新入社員を洗脳し、序列に組み込むための、実に日本的な儀式だと思います。1年生のテニス部員が球拾いをやらされるのと同じ理屈ですね。

 新人さんに組織にあった「振舞い」が身に付くと、段々と重要な仕事を任されるようになります。1年も過ぎる頃にはすっかり会社のカラーに染まり、そして次の新入社員が入ってきます。雑用はすべて新入りにバトンタッチ。年功序列って、サラリーマンに既得権の味を憶えてさせてしまう、問題の多いシステムであるように思います。

 ただ、こういった徒弟制度のようなシステムも、悪い所ばかりではありません。「下積み」と呼ばれる仲間入りの儀式をキチンと踏めば、皿洗いから料理人に、あるいは雑用係から職人さんになる道が拓けたりもします。現実にそんなふうに立身を遂げていった人々、私たちの周囲にも少なからずいるのではないでしょうか?

「雑用」はどこへ行ったのか?
 経験値や学歴の低い若者にとって、単調でつまらない仕事から業界に潜り込み、そこで認められ実績を積んでいくのは洋の東西を問わず貴重な立身出世のルートとして長年機能してきました。しかし、非正規雇用が3割以上を占める現在では、こうした徒弟制度そのものが崩壊しつつあります。派遣労働先に骨を埋めることなんてできません。

 さらに年功序列、徒弟制度的なシステムを更に破壊しつつあるのが、急速に進む機械化です。20年前には新入社員の当たり前仕事だった雑用も今は機械が代行です。コピー取りもファックスも、必要性そのものが激減してしまいました。残った雑用も、やらさせるのは新人ではなく派遣社員だったり…。

 新人もいきなりそれなりの仕事をしなくっちゃなりませんから、大変なものです。その一方、先輩の方も先輩面する機会が減ったんじゃないかと思います。新人の方がITに明るいこともあるでしょう。また、仕事の道具そのものがIT化で大幅に簡略化され、先輩が教えるほどの仕事ではなくなってしまったことも多いのではないでしょうか? ネットで調べれば分かることも多い時代ですから、先輩の権威を保つのも大変でしょう。

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes・note会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

ケイクス

この連載について

初回を読む
IT時代の未来〜それはユートピアかディストピアか?

松井博

現在、IT革命によって世の中の仕組みが急速に変わりつつあります。産業、政治、就労、コミュニケーション…… 影響を受けない分野はありません。未来はどうなっていくのか、こうした時代が私たちにどんな選択を迫ってくるのか、元アップル管理職の松...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

Singulith 「恐るべきはその値段で、わずか220万円なのです。人間を一人雇えば300万円ほどの経費がかかりますから、この値段ならたとえ1年で壊れてしまっても元が取れると言うわけです。」 https://t.co/M6cR81Xx2F 約4年前 replyretweetfavorite

kantoku_kun トラックは既に無人運転なのね。 5年弱前 replyretweetfavorite

Matsuhiro 今さっき見たら最新のランキングで2位だったので、喜びをお裾分けしよう!今から60分無料! 5年弱前 replyretweetfavorite

ko_kishi "先輩だからと言って胡座をかいたり、大学出ているからと安心したりするのは多分あんまり賢い振舞いではありません。自分の頭を使う訓練をし続ける。多分そこが「肝」ですね。" 松井博|cakes http://t.co/xJ7fvC2jEj 5年弱前 replyretweetfavorite