うつになってもあなたはあなた
うつになると、自分が壊れた感じがします。「自分は昔からダメだったのではないか」という気にもなります。
過去検索をして「ダメな自分探し」を始めてしまったり、今度は未来に対しても、「きっとダメだ」という感じになっていくのです。
うつになっても、あなたがあなたであることは変わりません。自分が生きてきたストーリーの中で、そこのワンシーンがあったというだけの話です。
乗り越えた人間にはわかるのです。とにかく死なずに生きてみる、日々を過ごしてみることです。いいも悪いも別にして、ただただ向き合って、「何が起きたか」という事実だけを見ていくのです。
そうすると、「あれ? うつうつとしていたときとは違う自分がここにいる」と感じる瞬間があるのです。
そのときがチャンスです。今の自分が自分なら、それ以前の自分は自分ではなかったのかというと、そんなことはないわけです。うつだったからこそ、壊れた感じがして、「自分の過去も未来もダメ」みたいなレッテルを貼っていただけなのです。
ふと、そう感じない瞬間が来たときに、それを逃さずに見てみると、「あっ、落ち込んでいたあのときも私は私だったな」と認められるときが来るのです。
そして、そこで終わらせずに、「いや、うつになったからこそわかることがあるよね」という気づきにつなげることができます。
第3章で「元通りの私にこだわるな」と書きましたが、「以前はできたけれど今はできないこと」に注目してしまう人は多いです。
でも、もっと気づくべきところがあるのではないでしょうか。
打たれ強くなったとか、人の痛みがわかるようになったとか。
自分では気づきにくいのですが、普通には戻れないどころか、今の経験でどれだけ成長しているかわかりません。それを振り返る時期というのが必要なのです。
震災の復興支援でも、被災者の方たちに「振り返り期」というものを作っています。「今までこんなにつらくて、こうだった。でも、今はこうだ」と、自分のストーリーをもう一回おさらいすることによって、成長に気づけます。
それが他者の支援にもつながっていくのです。「あなただからこそ、ほかの人の支援ができるし、あなただからこそ、私よりももっといい支援者になれるのでは?」という地点に行き着くのです。
元に戻るのではなく、成長していて社会貢献できる。それはすごいことではないでしょうか。