「我慢」は美徳ではない
我慢する人は偉い。我慢できない人はわがままで、みんなに迷惑をかける。
そんなふうに思っている人は多いのではないでしょうか。
でも、もしあなたが嫌なことを我慢し続けて壊れてしまったら、そのほうがずっと人の迷惑になることは、わかりますよね。
我慢ではなくて「工夫」するのが正解です。
闇雲に耐え忍んでも意味がないのです。
自衛隊は、まさに我慢が美徳のようになっている組織です。内閣総理大臣が視察に訪れる観閲式という式典があるのですが、そのときは何時間も「気をつけ」をしたままでいなければいけないのです。ピクリとも動いてはいけないのです。
ずっとそうしていると、「休め」と言われても身体が動かなくなります。うまくやれる人は、動いてないふりをして靴の中で足の指をもぞもぞしているとか、お尻の穴を締めたりゆるめたりとか、何かしらやっているのです。
でも、若い子や経験がない人はひたすら我慢するので、気を失ってバタンと倒れてしまいます。まわりの人にはぶつかるし、大きな音はするし、衛生科部隊は出動させられるしで、とても迷惑になるのです。
だから、我慢ではなくて工夫が必要なのです。みんな工夫しているから、なんとかやり過ごすことができているのです。
私もそうなのですが、不器用な人は「我慢しなさい」と言われると、それ以外のことが思いつかなくなります。だから、意識的に想像を膨らませて、「やってはいけないところと、やっていいところのギリギリを攻める」というやり方が必要になります。
自衛隊のルールとして、自衛隊で知り得たことはいっさい話してはいけないというものがあります。今、漁業取締船の民間会社委託のメンタルヘルスをやっていますが、その会社にもそれと同じようなルールがあるのです。そうすると、誰ともしゃべれなくなります。どこに勤務して、どんな仕事をしているということだけでなく、自分についてのすべてを話せないのです。
そんなことをしていると、どんどん友だちがいなくなって、社会で生きていけなくなりますが、そういうふうに思い込んでいる人たちが8割ぐらいいるのです。
でも、本当は、何もかも言えないということはないのです。昨日の夕ご飯には何が出たとか、いつも何時ぐらいに寝るとか、そういうのは言ってもかまいませんよね。そういうギリギリのところがわからないので我慢してしまうわけです。
ある種の悪知恵というか、「ここまではやっていいかどうかは実験してみないとわからない、だからやってみる」とか、「𠮟られることを覚悟でギリギリのラインを探究する」というのは、すごく大事なことです。
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。