書けるひとになる! 魂の文章術

結局、自分のこだわりについて書くのだ

書くことで、あなたの人生はもっと楽しくなる! 全米100万部超え、14カ国語で翻訳された、ロングセラーの名著がついに復刊! 自己表現したい/書きたいのに書けない/もっとうまく書きたい… そんなあなたに贈る「書けるひとになる! 魂の文章術」は何度も読みたくなる 楽しい文章読本だ。ベストセラー作家にして40年にわたってライティングを教え続けている著者自身や生徒たちの実体験を踏まえ、<どうすれば書けるか><書き続けられるか>を伝授する。

私は折にふれて、自分がこだわっているもののリストを作ってみる。こだわりの対象はつねに変化し、増える傾向がある。なかにはありがたいことに、忘れてしまったものもある。

物書きは結局、自分のこだわりについて書くことになるものだ。自分にまとわりついて離れないこと、どうしても忘れられないこと、自分の中にあって解き放たれるのを待っている物語……。

私は生徒にこだわりのリストを作らせる。そうすることで、ふだん自分が無意識に(あるいは意識的に)絶えず考えていることがわかるからだ。いったん書きとめておくと、のちのちとても役に立つ。それが書く題材のリストになるからだ。また、大きなこだわりにはパワーがある。文章を書いているうちに、あなたは何度も何度もそこに戻ってくる。そのたびにあなたはそこから新しい物語を生み出すことになるだろう。そうであるなら、こだわりには逆らわないほうがよさそうだ。おそらくそれは、望もうが望むまいがあなたの人生を支配するものなのだから、できれば自分のために利用すべきだと思う。

私のこだわりのひとつは、自分のユダヤ系の家族だ。これについてはじゅうぶん書いたから、もう書くのはやめようと思うことがよくある。あまり母親のことばかり書いてお母さん子のように思われたくないし、書くことは他にもごまんとある。実際、ぜんぜん別の話題だって、ごく自然に頭に浮かんでくる。しかし家族のことを書くまいと決心すると、その抑圧行為が他のあらゆることも抑圧してしまうように感じられる。理由は簡単。なにかを避けることには多大なエネルギーがいるからだ。

それはダイエットを決意するのにも似ている。そう決意するやいなや、食べ物だけがこの世で唯一手ごたえのあるものに思えてくる。車の運転や、ジョギング、日記をつけることといった他のすべての行為は、とつぜんたまらなくほしくなる、たったひとつのものを避ける手段になるのだ。生活の中に食べ物や空腹の場を認めてやったほうが、私の場合はうまくいくようだ。けれども、一度にクッキー十二枚をむさぼり食べることにならないよう、やさしく認めてやる必要がある。

家族について書くことにも同じことが言える。数ページ与えてやれば、家族は「こだわりの殿堂」の中で自らの場を持つことになり、私が他のことを書いても許してくれるだろう。抑圧しようとすれば、それらはたわいない詩の中にさえ、いつも登場することになるだろう。たとえば詩の中に出てくるアイオワの農家の主婦でさえ、いまにもブリンツ〔薄いパンケーキでチーズやジャムなどをくるんで焼いたユダヤ料理〕を作りはじめそうな口調になるのだ。

アルコール依存症から立ちなおりつつある人から、こんなことを聞いた。アル中の人はパーティーに行くと、どこにどれだけお酒があるか、自分がどれだけ飲んだか、次の一杯をどこで手に入れられるかをつねに把握しているそうだ。私自身はそれほど酒好きではないが、チョコレートに目がないのはわかっている。アル中の人の行動について聞いたあと、私は自分を観察することにした。翌日、私は友達の家にいた。彼のルームメートがチョコレートケーキを作っていた。私と友達は映画を観に行くことになっていたため、ケーキが焼きあがる前に家を出なければならなかった。映画を観ているあいだ、私の頭の片すみにはずっとケーキのことがちらついていた。早く戻ってあのケーキを食べたい。映画が終わると、私たちは別の友達とばったり出会い、どこかで話をしないかということになった。私は自分がパニック状態になっているのがわかった。それほどまでケーキが食べたかったのだ。私は、いったん友人の家に戻ってから出なおさなくてはいけない理由をあせってでっちあげた。

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

書けるひとになる! 魂の文章術

N・ゴールドバーグ,小谷啓子
扶桑社
2019-11-02

この連載について

初回を読む
書けるひとになる! 魂の文章術

ナタリー・ゴールドバーグ

書くことで、あなたの人生はもっと楽しくなる! 全米100万部超え、14カ国語で翻訳された、ロングセラーの名著がついに復刊! 自己表現したい/書きたいのに書けない/もっとうまく書きたい… そんなあなたも、“書けるひと”になれる! 何度も...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

Tweetがありません