松方正義・元内閣総理大臣の五男で、東海生命(後に第一生命に合併)、東京瓦斯電気工業(いすゞ自動車、日野自動車などの前身)などの社長を務めた。1931年11月11日の渋沢の卒去に伴う寄稿とみられる。
澁澤翁は、論語とそろばんの教えを垂れられた人である。いつの世においても実業家はとにかく物質方面にばかり走るものだ。欲の追求に日もこれ足らず、欲は欲を生んで、その追求に自らの墓穴を掘るというのが常例で、精神の重要を閑却する傾きがあるのだが、この中にあって、翁は実業と道徳の両立すべきものであり、実業は道徳の基礎の上に置かねばならぬことを敢然として主張されたのである。
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