縦の関係から横の関係へ
哲人 課題の分離について説明するとき、「介入」という話をしましたね。他者の課題に対して、土足で踏み込んでいくような行為のことです。
それでは、どうして人は介入してしまうのか? その背後にあるのも、じつは縦の関係なのです。対人関係を縦でとらえ、相手を自分より低く見ているからこそ、介入してしまう。介入することによって、相手を望ましい方向に導こうとする。自分は正しくて相手は間違っていると思い込んでいる。
もちろんここでの介入は、操作に他なりません。子どもに「勉強しなさい」と命令する親などは、まさに典型です。本人としては善意による働きかけのつもりかもしれませんが、結局は土足で踏み込んで、自分の意図する方向に操作しようとしているのですから。
青年 横の関係を築くことができれば、介入もなくなる?
哲人 なくなります。
青年 でも、勉強の例ならともかく、目の前に苦しんでいる人がいたら、放置することなどできないでしょう? それも「ここで手を差し伸べるのは介入だから」と、なにもしないのですか?
哲人 見過ごすわけにはいきません。介入にならない「援助」をする必要があります。
青年 介入と援助の、どこが違うというのです?