嫌われる勇気

第四夜 vol.2 哲人は諭す。「すべての人は所属感を求めている」

アドラー心理学の鍵となる概念である「共同体感覚」の説明にあたって、哲人は「承認欲求にとらわれた人は、すべて自己中心的である」と語ります。他者からの期待を満たそうとすることが、なぜ自己中心的なのでしょうか? 人は社会の中に、そして対人関係の中になにを求めているのか。青年の追求に、哲人は意外な答えを語りました。

なぜ「わたし」にしか関心がないのか

哲人 では、具体的に考えていきましょう。ここではわかりやすく、「自己への執着」という言葉を、「自己中心的」と言い換えます。あなたの頭のなかにある自己中心的な人とは、どんな人物でしょうか?

青年 うむ、まず思い浮かぶのは、暴君のような人物ですね。横暴で、他人の迷惑など顧みず、自分の都合しか考えない。世界は自分を中心に回っているのだと考え、権力や腕力に任せて、専制君主のように振る舞う。周囲にとっては、迷惑甚だしい人物です。ちょうど、シェイクスピア劇のリア王などは典型的な暴君タイプでしょう。

哲人 なるほど。

青年 一方、暴君ではなくとも、集団の和を乱すような人物もまた、自己中心的といえます。集団行動ができず、単独行動を好む。遅刻をしたり約束をすっぽかしても反省しない。ひと言でいえば自分勝手な人物ですね。

哲人 たしかに、自己中心的な人物に対する一般的なイメージは、そのあたりでしょう。しかし、もうひとつのタイプを付け加えておかねばなりません。じつは「課題の分離」ができておらず、承認欲求にとらわれている人もまた、きわめて自己中心的なのです。

青年 なぜです?

哲人 承認欲求の内実を考えてください。他者がどれだけ自分に注目し、自分のことをどう評価しているのか? また、自分になにをしてくれるのか? 自分の欲求を満たしてくれるのか? ……こうした承認欲求にとらわれている人は、他者を見ているようでいて、実際には自分のことしか見ていません。他者への関心を失い、「わたし」にしか関心がない。すなわち、自己中心的なのです。

青年 じゃあ、わたしのように他者からの評価に怯えている人間もまた、自己中心的だというのですか? これほど他者に気を遣い、他者に合わせようとしているのに!?

哲人 ええ。「わたし」にしか関心がない、という意味では自己中心的です。あなたは他者によく思われたいからこそ、他者の視線を気にしている。それは他者への関心ではなく、自己への執着に他なりません。

青年 しかし……。

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嫌われる勇気

岸見一郎 /古賀史健

「世界はどこまでもシンプルであり、人はいまこの瞬間から幸せになれる」――古都のはずれに、そんな持論を語る哲学者が住んでいました。人間関係に苦悩し、人生の意味に悩む「青年」は、到底納得することができず、その真意を確かめるべく哲学者(哲人...もっと読む

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コメント

porpor35 「所属感とはただそこにいるだけで得られるものではなく、共同体に対して自らが積極的にコミットすることによって、ようやく得られる」 約5年前 replyretweetfavorite

starkbogen 「承認欲求にとらわれている人は、他者を見ているようでいて、実際には自分のことしか見ていません」ほんまそれ ほんまそれ(大事なので二回言いry 約5年前 replyretweetfavorite

mm0905 世界地図と地球儀の違いのたとえ、わかりやすかった!⇒ 約5年前 replyretweetfavorite

mm0905 「」になってた~!⇒ 約5年前 replyretweetfavorite