使える哲学

リクルート、ライオン、パルコ…続々導入 企業が始めた哲学シンキング

新規事業の開拓に人材育成、社員の働き方など、答えのない課題に頭を悩ませている企業は多いだろう。その打開策を求める一部企業がビジネスに導入し始めたのが「哲学シンキング」だ。

Photo by Hiroaki Miyahara

 「営業って、そもそも何?」「売上が伴わないと営業と呼べないのか?」「営業にゴールはあるの?」──。

 5月、宿泊予約サイト「じゃらんnet」を運営するリクルートライフスタイル。社内活動として開かれた企業向けワークショップ(体験型講座)に参加した同社の営業担当者やホテル経営者からは、そんな「問い」が発せられた。

 ワークショップで掲げられたテーマは「営業」の一語のみ。そして参加者には、このテーマに対する意見や案ではなく最初の5分間は「問い」だけを発することが求められた。未経験の議論の“縛り”に、営業のプロである社員も、初めは戸惑いを見せた。だが、自分の仕事への素朴な「問い」が徐々に出始めると、問いに問いが重なり合い、最後は「今後はKPI(重要業績評価指標)などによらない新しい営業の概念が必要では?」といった、当初の問いとは懸け離れた発想が次々と生まれ、次第に参加者の間で課題に対する価値観の共有が生じていった。

 「哲学シンキング」と名付けられたこのワークショップは、哲学がその長い歴史で培った“暗黙知”をビジネスに応用した新しいメソッドだ。

 そのメソッドを確立し、ワークショップでファシリテーター(司会進行役)を務めたのは、日本では耳慣れない「哲学コンサルティング」企業、クロス・フィロソフィーズの吉田幸司社長だ。

 一昨年に同社を設立した吉田氏は、宇宙論を学ぶために上智大学の物理学科に入学し、哲学へ転身。同大学では史上最年少の28歳で哲学の博士号を取得した。現在も同大学で非常勤講師を務める哲学者だ。吉田氏は言う。「人文学不要論が叫ばれる一方、ビジネスでも答えのない問題が次々に出てきている。そのような難問に有効なのが哲学だ」と。

世代調査からマーケティングまで
幅広く適用できる

 先のワークショップは、岐阜県観光連盟の主催で6月から始まる、じゃらんnetに加盟するホテル・旅館経営者向けの生産性向上を図る活動の一環だ。吉田氏の講演が決まり、営業社員も事前にそのメソッドを体験しようという目的で開かれたわけだ。

 「一見自明に思える『おもてなしとは何か』『ホテル・旅館とは何か』などをあらためて問うことに、新たな可能性を感じる」と、哲学導入の音頭を取った同社の山田修司CSカレッジ長は言う。

 ビジネスへの導入を図ったのは、同社だけではない。パナソニックやライオン、パルコといった大手企業から仏像販売会社、保育事業の認定NPO法人まで多種多様だ。

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ダイヤモンド社; 週刊版
2019-06-03

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「物事の本質は何か?」「人間とは何か?」「正しいとは何か?」──。そんな答えの見えない難問に、人は2500年にわたって挑んできた。この間、連綿と培われてきた哲人たちの洞察や思考スキルが、ビジネスや仕事に使えないはずがない。先の見えない...もっと読む

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