使える哲学

賢人たちの言葉講座 #3 近代 ~経験論と合理論の統合と 人・社会の進歩への信頼

【哲学者は何を語ってきたか】
いざ哲学を学ぼうとして、あまりの難解さに挫折した人も多いはず。だが、心配は無用だ。人物と歴史を軸に、その思想を分かりやすく解説する。

(前回→#2 中世・近世 ~神の支配から解放され「合理論」vs「経験論」へ

 大陸合理論には、認識の根拠が独断的でこじつけがましいという弱点があり、イギリス経験論には、経験は完全な客観性を得られないという弱点があった。18世紀、双方の弱点を克服し、その統合を図った哲学者が、フランスでも英国でもなくドイツに誕生する。カントだ。

[カント]
人には自然科学的な認識を行うOSがある

 カントの考えはこうだ。

 人間の外側にある世界それ自体が本当はどんな姿をしているのかは、人間には分からない。しかし、人間には先天的アプリオリ)に、自然科学的な認識を行うパソコンのOSのような枠組みが備わっている。全員に同じ認識のためのサングラスが与えられているようなもので、外の世界の見え方は皆、同じになるのだと。

 こういうふうに考えることもできるだろう。当時、ニュートン力学に代表されるように、近代科学の世界では、客観的な知識が成立していた。人間が共通したサングラス、あるいは同じOSを持っていると考えなければ、そういった客観的な知識の成立を説明することはできないのだと。

 カントはこうした自身の哲学を天動説から地動説への転換になぞらえて、コペルニクス的転回と呼んだ。

 カント以前までは、人間が外の世界を認識するとき、自然のさまざまな事物(対象)を模写するように受動的に認識していると考えられていた。

 だが、そうではなく、人間の認識の枠組みの方が、外の世界を秩序立てて理解していると考えたのである。これが、カントの言う「認識が対象に従うのではなく、対象が認識に従う」という有名な言葉の意味だ。

 ただし、それはあくまで人間の主観に共通した枠組みを通じた認識だから、外界それ自体の姿を人間は認識することはできない。つまり、カントは、物自体の世界と、人間に認識可能な現象の世界を分け、現象の世界では客観的な知識が成立することを論証したのだ。

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週刊ダイヤモンド 2019年6/8号 [雑誌]

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ダイヤモンド社; 週刊版
2019-06-03

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「物事の本質は何か?」「人間とは何か?」「正しいとは何か?」──。そんな答えの見えない難問に、人は2500年にわたって挑んできた。この間、連綿と培われてきた哲人たちの洞察や思考スキルが、ビジネスや仕事に使えないはずがない。先の見えない...もっと読む

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