「革命」の背後に横たわる
強気の論理
カルロス・ゴーン氏はルノー・日産・三菱アライアンスを率い、日産自動車等の会長兼最高経営責任者を務めていたが、周知の通り、会社法違反(特別背任)などの容疑で東京地検特捜部により逮捕され、現在は解任されている。
彼が手掛けた「日産リバイバルプラン」は激しいリストラを伴い、大きな批判にさらされたが、その都度彼は極めて論理的に、そして正面から反論してきた。そうした反論をどのように行い、どのようにリストラを正当化してきたのか。その思考を振り返るのは決して無駄ではないだろう。
まずは批判の具体例を見ていこう(本誌2000年11月18日号)。99年度の日産の最終損益は6844億円もの赤字であったが、翌2000年度には過去最高3311億円の黒字に復活した。こうした劇的な収益回復は、サプライヤーたちの犠牲の上に成り立っていると当時より批判されている。すなわち、日産が部品や素材を安く買いたたいたから、収益が上向いたという批判である。
これに対してゴーン氏は日産のサプライヤーが20%の購買費ダウンを受け入れたことを認めた上で、「サプライヤーの利益維持」は可能であり、実際に日産サプライヤーの「収益性の改善」が果たされていると応じ、そこに犠牲はないと端的に反論している。
このとき彼はおそらく、次のように批判者の論理を再構成していると思われる。すなわち、
(1)サプライヤーが提供価格を下げることは、取引相手のために犠牲になることである。
(2)日産との取引に際し、サプライヤーは提供価格を下げた。
よって、
(3)サプライヤーは日産のために犠牲になっている。(1)と(2)が前提(理由)となって、(3)の結論が導き出されている。
議論を退けるためには、前提が誤っているか、推論(前提から結論を導き出すこと)が誤っているかを指摘しなければならない。さてゴーン氏はどうしたのか。彼は前提の(1)が誤っていると批判する。部品や素材の価格を下げながらも、サプライヤーの収益性は向上し得ると述べているのだ。
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