書けるひとになる! 魂の文章術

自動車を食べる男—ニセモノより変人でいい

書くことで、あなたの人生はもっと楽しくなる! 全米100万部超え、14カ国語で翻訳された、ロングセラーの名著がついに復刊! 自己表現したい/書きたいのに書けない/もっとうまく書きたい… そんなあなたに贈る「書けるひとになる! 魂の文章術」は何度も読みたくなる 楽しい文章読本だ。ベストセラー作家にして40年にわたってライティングを教え続けている著者自身や生徒たちの実体験を踏まえ、<どうすれば書けるか><書き続けられるか>を伝授する。

何年か前、新聞に面白い記事が載った。私自身その記事を読んだわけではなく、人から聞いたのだが、インドのあるヨーガ行者が自動車を食べたというのだ。一度に全部ではなく、ゆっくりと一年かけて食べたそうだ。私はこの手の話が大好きだ。食べたあと、体重はどれくらい増えたのかしら? 何歳の人? 歯はみんなそろっていたの? キャブレターや、ハンドルや、ラジオも食べたの? どこのメーカーの車? オイルは飲んだのかしら?

私はこの話を、ミネソタ州オワトンナの小学校三年生にしてみた。生徒たちは青いじゅうたんにすわって私の話を聞いた。みんな、さっぱりわけがわからないようで、「どうして車なんか食べたの?」 とごくあたりまえの質問をしてきた。それから「ゲー!」という声。けれども、元気よさそうな茶色い目の生徒—この子とは生涯の友達になれそうだ—は、私を見るなりいきなり大笑いした。私も笑いだした。すごいじゃない! 人が車を食べちゃったなんて! この話にはそもそも理屈なんてまったくない。ひたすらばかげているのだ。

書くことは、ある意味でこうあるべきだ。「なぜ」と聞いたり、お菓子(またはスパークプラグ)の山からそっといくつかつまみあげるようにではなく、なんでも好き放題心に食べさせ、それから紙の上に勢いよくどっと吐き出すのだ。「これは書くに値する題材だ」「そんなことは書くべきじゃない」などと考えないこと。書くことはすべてであり、無条件だ。書くことと人生と心とのあいだに分離など存在しない。人に車を食べさせるほど思考が拡大すれば、あなたにはアリがゾウに、男が女に見えるようになるだろう。形あるあらゆるものの境が透明になり、一切の分離が消え去るのがわかるようになるだろう。

これが暗喩というものだ。アリとゾウは似ていると言おうとしているわけじゃない。まあ、どちらも生き物だという点では似ているだろう。しかし、そういうことじゃない。暗喩とは、そのアリはゾウであると言い切ることなのだ。論理的な精神で見れば、アリとゾウはたしかにちがう。目の前にアリとゾウが並べば、私はどちらがゾウでどちらがアリかをいつでも正しく言い当てられるだろう。そうであるなら、暗喩とは、論理や知性とはまったく別の意識から生まれてくるものにちがいない。それは、決まりきったものの見方から一歩はずれようとする意志と、アリとゾウが一体に見えるまで心を開く勇敢な姿勢とから生まれるものなのだ。

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

書けるひとになる! 魂の文章術

N・ゴールドバーグ,小谷啓子
扶桑社
2019-11-02

この連載について

初回を読む
書けるひとになる! 魂の文章術

ナタリー・ゴールドバーグ

書くことで、あなたの人生はもっと楽しくなる! 全米100万部超え、14カ国語で翻訳された、ロングセラーの名著がついに復刊! 自己表現したい/書きたいのに書けない/もっとうまく書きたい… そんなあなたも、“書けるひと”になれる! 何度も...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

Tweetがありません