嫌われる勇気

第三夜 vol.5 哲人は回想する。「対人関係のカードはすべて『わたし』が握っていた」

「自由とは、他者から嫌われることである。あなたが誰かに嫌われているということ。それはあなたが自由を行使し、自由に生きている証であり、自らの方針に従って生きていることのしるしなのだ」と語る哲人。彼は「嫌われる勇気」という言葉を持ち出し、人は嫌われる勇気を持ちえてこそ幸せになれるのだと説きます。そして青年に対し、自らの親子関係について語り始めました。

対人関係のカードを握るのは誰か

青年 しかし、まさか哲学者の部屋を訪ねて「嫌われること」を説かれるとは、思いもしませんでしたよ。

哲人 決して飲み込みやすい話ではないことは、わたしも承知しています。咀嚼して、消化するまでには時間も必要になるはずです。おそらく本日、これ以上の話を進めても頭に収まりきれないでしょう。そこで最後に、課題の分離についてもうひとつ、わたし自身の話をして、今日の終わりとさせてください。

青年 わかりました。

哲人 これも親との関係です。わたしは幼いころから父との関係がうまくいきませんでした。会話らしい会話も交わすことのないまま、20代のころに母が亡くなり、父との関係はますますこじれていくことになります。そう、ちょうどわたしがアドラー心理学と出逢い、アドラーの思想を理解するまでは。

青年 お父様との関係が悪かったのはなぜですか?

哲人 わたしの記憶にあるのは、父から殴られたときの映像です。具体的に、なにをしてそうなったのかは覚えていません。ただわたしは父から逃れようと机の下に隠れ、父に引きずり出され、強く殴られました。しかも一発ではなく、何発も。

青年 その恐怖がトラウマとなって……。

哲人 アドラー心理学に出逢うまでは、そう理解していたのだと思います。父は無口で気むずかしい人でしたからね。しかし、「あのとき殴られたから関係が悪くなった」と考えるのは、フロイト的な、原因論的な発想です。
 アドラー的な目的論の立場に立てば、因果律の解釈は完全に逆転します。つまり、わたしは「父との関係をよくしたくないために、殴られた記憶を持ち出していた」のです。

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes・note会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

ケイクス

この連載について

初回を読む
嫌われる勇気

岸見一郎 /古賀史健

「世界はどこまでもシンプルであり、人はいまこの瞬間から幸せになれる」――古都のはずれに、そんな持論を語る哲学者が住んでいました。人間関係に苦悩し、人生の意味に悩む「青年」は、到底納得することができず、その真意を確かめるべく哲学者(哲人...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

keitaigarashi 少しこれを思い出すきっかけがありました。私から変わってみることでいいことあるかも。良記事感謝です。 3年弱前 replyretweetfavorite

fumiken 【嫌われる勇気】【7日間無料】 5年弱前 replyretweetfavorite

gotoichi1003 ものの見方を変えるだけで、少なくとも自分の現実は変わる!!!→ 5年弱前 replyretweetfavorite