年金をつぎ込んでなんとか維持している、日本の一次産業の実態

東北の農業や漁業の現場を取材したタブロイド紙と、野菜や魚などの生産物をセットで届ける新しいタイプのメディア「東北食べる通信」。その名物編集長が、「都市」と「地方」を切り口に、これからの農業・漁業、地域経済、消費のあり方、情報社会における生き方までを語り尽くした、『都市と地方をかきまぜる』(光文社新書)を、cakes読者に特別公開します!

二 農漁村の光と影

冷蔵庫行き

「お前、冷蔵庫行き決定か」

二〇一一年の夏、被災地となった沿岸のある高校生たちの会話を聞いていたときに、この言葉が耳に入ってきた。聞けば「冷蔵庫」とは、水産加工会社のこと。どこにも行くところがないダメなやつが最後に行くところ、それが水産業なのだという。震災でふるさとのために何かしたいという意識が子どもたちの中に芽生えた被災地ですら、こうなのだ。まして内陸の農業は言うに及ばずだ。

一般的に地方の中学校では、生徒が偏差値で輪切りにされ、下の方から農業高校、水産高校に進学する。そして農業、水産業を学び、卒業時には大半が一次産業とは関係がない会社に就職していく。なぜ若者たちは一次産業を毛嫌いするのか。一般的にいわれていることは、収入が低い、イメージが悪い、結婚できないなどだ。こうして日本の一次産業の現場から、若い人間がどんどん姿を消していった。腰をまげた年寄りが年金をつぎ込んでなんとか維持しているのが、日本の一次産業の実態である。また、外国人労働者が低賃金で労働力不足を補なっている実態もある。

誰もが口では一次産業は大事だ、農漁村は必要だという。しかしいざ自分がやるのかとなればやらない、息子にやらせるのかとなればやらせない。多くの消費者は、日本の農家や漁師が額に汗しながら生産した食材が入った五〇〇円の弁当ではなく、海外の原材料を使った二八〇円の弁当を買っている。そうしておきながら、農家や漁師が食えないと嘆いているのがこの国の姿だ。

人間は食べなければ生きていけない。だから食に関してはすべての国民が当事者なのだが、多くの人にとって他人事になっている。当事者意識はどこにいってしまったのだろうか。

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この連載について

都市と地方をかきまぜる 「食べる通信」の奇跡

高橋博之

東北の農業や漁業の現場を取材したタブロイド紙と、野菜や魚などの生産物をセットで届ける新しいタイプのメディア「東北食べる通信」。その名物編集長が、「都市」と「地方」を切り口に、これからの農業・漁業、地域経済、消費のあり方、情報社会におけ...もっと読む

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