課題の分離と人生の嘘
青年 ……どうも腑に落ちませんね。
哲人 それでは、あなたの就職先に関して、ご両親が猛反対している場面を想定しましょう。実際のところ、反対されたわけですよね?
青年 ええ、正面きっての猛反対というほどではありませんが、言葉の端々に嫌味が込められていました。
哲人 では、わかりやすく、それ以上の猛反対だったとします。父親は感情的に怒鳴り散らし、母親は涙を流して反対していた。ぜったいに認めない、お兄さんと一緒に家業を継がないのなら親子の縁を切るとまで迫られたと。しかし、ここでの「認めない」という感情にどう折り合いをつけるかは、あなたの課題ではなくご両親の課題なのです。あなたが気にする問題ではありません。
青年 いや、ちょっとお待ちください! つまり先生は、「親をどれだけ悲しませようと関係ない」とおっしゃるのですか?
哲人 関係ありません。
青年 冗談じゃない! 親不孝を推奨する哲学など、どこにありますか!
哲人 自らの生について、あなたにできるのは「自分の信じる最善の道を選ぶこと」、それだけです。一方で、その選択について他者がどのような評価を下すのか。これは他者の課題であって、あなたにはどうにもできない話です。
青年 相手が自分のことをどう思おうと、好いてくれようと嫌っていようと、それは相手の課題であって、自分の課題ではない。先生はそうおっしゃるのですか?
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