嫌われる勇気

第三夜 vol.3 哲人は教示する。「ゴルディオスの結び目を断て」

自らと他者とのあいだに線を引き、課題を分離せよ。哲人はそう語りました。他者の課題に介入せず、自らの課題には介入させない。それだけでわれわれの対人関係は一気に軽いものへと変貌すると。しかし、納得のいかない青年はなおも問います。課題の分離とは、人と人の絆を断ち切ることではないか。そんな態度が許されるのか。……哲人の答えは意外なものでした。

課題の分離と人生の嘘

青年 ……どうも腑に落ちませんね。

哲人 それでは、あなたの就職先に関して、ご両親が猛反対している場面を想定しましょう。実際のところ、反対されたわけですよね?

青年 ええ、正面きっての猛反対というほどではありませんが、言葉の端々に嫌味が込められていました。

哲人 では、わかりやすく、それ以上の猛反対だったとします。父親は感情的に怒鳴り散らし、母親は涙を流して反対していた。ぜったいに認めない、お兄さんと一緒に家業を継がないのなら親子の縁を切るとまで迫られたと。しかし、ここでの「認めない」という感情にどう折り合いをつけるかは、あなたの課題ではなくご両親の課題なのです。あなたが気にする問題ではありません。

青年 いや、ちょっとお待ちください! つまり先生は、「親をどれだけ悲しませようと関係ない」とおっしゃるのですか?

哲人 関係ありません。

青年 冗談じゃない! 親不孝を推奨する哲学など、どこにありますか!

哲人 自らの生について、あなたにできるのは「自分の信じる最善の道を選ぶこと」、それだけです。一方で、その選択について他者がどのような評価を下すのか。これは他者の課題であって、あなたにはどうにもできない話です。

青年 相手が自分のことをどう思おうと、好いてくれようと嫌っていようと、それは相手の課題であって、自分の課題ではない。先生はそうおっしゃるのですか?

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嫌われる勇気

岸見一郎 /古賀史健

「世界はどこまでもシンプルであり、人はいまこの瞬間から幸せになれる」――古都のはずれに、そんな持論を語る哲学者が住んでいました。人間関係に苦悩し、人生の意味に悩む「青年」は、到底納得することができず、その真意を確かめるべく哲学者(哲人...もっと読む

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コメント

tommynovember7 戯画化されたこの青年の言動にはホントにイライラさせられるが、それは私の課題であって彼のではない。 4年以上前 replyretweetfavorite

fumiken 【嫌われる勇気】無料会員登録をすると本日より7日間無料で読めます!⇒「課題の分離」に戸惑う青年に対し、哲人が投げかけた逸話、ゴルディオスの結び目とは? 4年以上前 replyretweetfavorite

tamishop 今回も読ませます> 4年以上前 replyretweetfavorite

gotoichi1003 常識とは違う感じの本質論ですだ。何事も背負うとは考えないほうがいい場合が多し。→ 4年以上前 replyretweetfavorite