負けないぞと思ってないと、すぐ負ける
東急田園都市線で渋谷駅の隣、池尻大橋駅から徒歩3分に長寿庵はある。少し歩けばおしゃれな三宿、隣駅は三軒茶屋でありながら、店名どおり、どこまでも懐かしくて安らげる、大衆的な蕎麦屋である。
チェーン店が続く商店街の一角に佇む。1964年開店
立地と、店の雰囲気に驚いていると、地下を見学してさらにびっくり。
自宅兼店舗の小さなビルの地下に、製麺所があったのだ。店主の儘田裕一(ままだゆういち)さんがここで午前9時から1時間、その日提供する分だけを毎朝製麺している。
製粉は、創業100年以上の小田原・久津間製粉から仕入れている
「目黒区東山は、たしかに地価は安くはないです。うちはまだそんな高くない頃、群馬から上京した父が苦労して昭和39年にここに店を開いたので。両親、姉の家族経営だからやってこれたようなものです。とはいえ池尻はチェーン店だらけですから、頑張らないと。チェーン店の研究力ってすごいから、負けないぞって強く思ってないと、すぐ負けちゃいます」
じつは、池尻大橋、最後の蕎麦店である。
ほっと安らげるする理由はいくつもある。
蕎麦以外に丼もの、うどん、ラーメンから肉じゃがやさばの味噌煮などの一品料理に至るまで、品数が豊富。
味付けはだしと醤油がきいた甘辛味で、満腹感を得られる。
どれもボリュームたっぷり。
ちょっと食べたいときに嬉しい小鉢麺500円。きりりとしまった香り高い蕎麦
そして、10年あまり働いているというパートさんも含め、店の人々がみな明るく朗らかで、愛想がいい。
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