上の[シーン❺]の同僚同士の議論はかみ合っていない。
この場合、「それは今の議論に関係ないでしょ」と言ってやればよいのだが、実際問題として、かみ合わないような反論をしてくる同僚は、簡単に引き下がってくれない可能性がある。
例えば、間違いを指摘されても認めずに、逆にこちらに対して「あなたこそ以前、××だったじゃないですか」と言い返してくるかもしれない。ひどいときには、何か意見を言うと「あなたみたいな人にそれを言う資格はない」などと攻撃してくるかもしれない。
このように相手の論証の中身ではなく、相手の人物評価に言及することで切り返そうとする方法は下の[シーン❻]のような「対人論証」と呼ばれる。
こういうときは、どうしたらいいのだろう。ここは毅然として、冷静に、あくまでも論理的に反論する方がいい。
きちんとした議論に引き戻すためには、まず、自分が論証を示し、次に相手の論証を検討する。
その論証に納得できないのであれば、どうして納得できないのか、相手の論証の不備を示す。示された根拠は正しいのか。単に相手の主張を否定するのではなく、論証の不備を示すのが最重要ポイントだ。これを「論証を批判する」と言うことにする。
一方、論証を批判することなく、単に相手の主張を否定する発言を「反対する」と言うことにする。単に反対するだけでは水掛け論に終わってしまう。話し合いを前進させるためには、批判しなければならない。
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。