使える哲学

ビジネスマンのシーン別 論理で鍛える【伝える力】(後編)

議論のとき、話し合いのとき、もどかしい思いをよくする。上司や部下と真剣にやりとりする場面でも、しっくりこない。そんな皆さんが学ぶべきは「論理の力」だ。相手にきちんと伝える力である。
『増補版 大人のための国語ゼミ』『新版 論理トレーニング』などの著書で知られる哲学者、野矢茂樹・立正大学教授のアドバイスの下、論理の基本を学び、スキルを身に付けよう。
前編のつづき)

 上の[シーン❺]の同僚同士の議論はかみ合っていない。

 この場合、「それは今の議論に関係ないでしょ」と言ってやればよいのだが、実際問題として、かみ合わないような反論をしてくる同僚は、簡単に引き下がってくれない可能性がある。

 例えば、間違いを指摘されても認めずに、逆にこちらに対して「あなたこそ以前、××だったじゃないですか」と言い返してくるかもしれない。ひどいときには、何か意見を言うと「あなたみたいな人にそれを言う資格はない」などと攻撃してくるかもしれない。

 このように相手の論証の中身ではなく、相手の人物評価に言及することで切り返そうとする方法は下の[シーン❻]のような「対人論証」と呼ばれる。

 こういうときは、どうしたらいいのだろう。ここは毅然として、冷静に、あくまでも論理的に反論する方がいい。

 きちんとした議論に引き戻すためには、まず、自分が論証を示し、次に相手の論証を検討する。

 その論証に納得できないのであれば、どうして納得できないのか、相手の論証の不備を示す。示された根拠は正しいのか。単に相手の主張を否定するのではなく、論証の不備を示すのが最重要ポイントだ。これを「論証を批判する」と言うことにする。

 一方、論証を批判することなく、単に相手の主張を否定する発言を「反対する」と言うことにする。単に反対するだけでは水掛け論に終わってしまう。話し合いを前進させるためには、批判しなければならない。

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週刊ダイヤモンド 2019年6/8号 [雑誌]

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ダイヤモンド社; 週刊版
2019-06-03

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「物事の本質は何か?」「人間とは何か?」「正しいとは何か?」──。そんな答えの見えない難問に、人は2500年にわたって挑んできた。この間、連綿と培われてきた哲人たちの洞察や思考スキルが、ビジネスや仕事に使えないはずがない。先の見えない...もっと読む

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