使える哲学

ビジネスマンのシーン別 論理で鍛える【伝える力】(前編)

【コミュニケーションの悩み解消】
議論のとき、話し合いのとき、もどかしい思いをよくする。上司や部下と真剣にやりとりする場面でも、しっくりこない。そんな皆さんが学ぶべきは「論理の力」だ。相手にきちんと伝える力である。
『増補版 大人のための国語ゼミ』『新版 論理トレーニング』などの著書で知られる哲学者、野矢茂樹・立正大学教授のアドバイスの下、論理の基本を学び、スキルを身に付けよう。

 上の[シーン❶]では、Aさんは「仕事を優先して残業もすべき」と主張し、Bさんは「プライベートの生活を仕事と切り離して大事にしたい」と主張する。そして議論は平行線になってしまっている。こんな「水掛け論」を社内でよく見掛けないだろうか。

 水掛け論は結局、威圧的な人、声が大きい人が、断定的な物言いで意見を押し通し、もう一方が引き下がることで決着しがちだ。そのとき、しばしば登場するのが下の「泥仕合を招く“ダメダメ言葉”」である。

 「バカじゃないのか」と言われれば、カチンとくる。だが、こんなとき「バカはあんたの方だ」とやり返すようでは、相手と同じになってしまう。「ダメダメ言葉」は、あなた自身がニセモノの説得力を振りかざしたりしないよう、心すべき言葉でもある。

 水掛け論とその先にある泥仕合を避けるには、自分の考えを相手にしっかりと伝え、また相手の考えをきちんと受け止めなければならない。

 自分の考えを伝えるには、結論だけをぶつけてもダメだ。その考えには根拠があるのか、どういった根拠から導かれ、根拠と結論はちゃんとつながっているのか。そうした論理の力を理解し、身に付けていかなければならない。

 「なぜ」という問い掛けに対して、「なぜなら」と答えていくのが「論証」だ。堅苦しい議論の場に限った話ではない。ある結論に対して何らかの根拠が示されているものは、全て論証といえる。

 自分の考えを相手に納得してもらえるか、説得力を持っているか。それはこの根拠に懸かっている。根拠が示されていない意見は「独断」にすぎず、根拠が示されていない推測は「憶測」にすぎない。根拠は意見や推測を支える“柱”の役割を果たすのである。

 そうした論証の基本形は「a。だから、b」「b。なぜならaだから」である。根拠aから主張bが導かれる、というものだ。

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ダイヤモンド社; 週刊版
2019-06-03

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「物事の本質は何か?」「人間とは何か?」「正しいとは何か?」──。そんな答えの見えない難問に、人は2500年にわたって挑んできた。この間、連綿と培われてきた哲人たちの洞察や思考スキルが、ビジネスや仕事に使えないはずがない。先の見えない...もっと読む

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