「哲学」と聞いて、どんなイメージを思い浮かべるだろうか。
おそらく、「役に立たない」「小難しい」「堅苦しい」といったあたりのはず。少なくとも哲学が「稼ぐ」という俗世間から最も縁遠いイメージを持つ学問であることは間違いない。
しかし、それは誤りである。フランスの哲学者、デカルトの有名な言葉をもじれば、「われ思う、故にわれ“稼ぐ”」をもたらすのだ。
「大哲学者になる夢を持っていた」と世界三大投資家の一人、ジョージ・ソロスが著書で明かしたように、彼は科学哲学の大家、故カール・ポパーに師事し、哲学博士号を取得した。
若き日のソロスは、トレーダーの仕事は生活のためで、自由時間を哲学研究に充てた。その中で考案した数々の哲学概念が、彼を世界的富豪にする原動力になったことは有名な話だ。
同じく米国の伝説的な投資家、ビル・ミラーは昨年、母校の一つの米ジョンズ・ホプキンズ大学哲学科に、日本円で80億円を超える金を寄付した。その理由は、自身に成功をもたらした「哲学で培われた分析力と心の在り方」への恩返しだ。
投資家だけではなく、米シリコンバレーの有名起業家にも哲学出身者は想像以上に多い。
代表格はペイパルの創業者、ピーター・ティールだろう。彼は著名な哲学者、故ルネ・ジラールに師事し、哲学の学位を取得した。伝記によれば、ジラールの理論の中核である「模倣理論と競争」が、ティールの「逆張り戦略」に大きな影響を与えたとされる。
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