BL進化論 セクシュアリティの歴史、BLの未来

BL研究」で生きていくということ

文系の研究者への道がますます険しくなっている昨今、BL研究を中心に活動している溝口彰子さんに、こんな質問が飛びました。「BL研究をどうやって生業にしたのですか?」。上野千鶴子さんの東大入学式での祝辞にあった「これまで誰も見たことのない知を生み出すための知」についても考えます。

BL研究は「生業」になるか

【質問4】研究者志望の大学生です。溝口先生は、どのように現在の研究を生業にされるようになったのか、お聞きしたいです。

溝口彰子(以下、溝口) シビアな話ですが、研究は生業にはなりません(キッパリ)。

雲田はるこ(以下、雲田) そうなんですか!? ああ~、世知辛い!

溝口 世知辛いですね。でも私は、研究者になったことを後悔していませんが。現在、生計は、さまざまな大学で非常勤講師を務めることで立てています。それと、SKIPシティ国際Dシネマ映画祭での通訳をはじめ、通訳や翻訳を少々。『BL進化論』シリーズの印税はもちろんいただいていますが、部数が少ないので、「本が出た年は会社員時代のボーナスのようなものがいただける」という規模感です。


BL進化論 ボーイズラブが社会を動かす

大学の専任教員になりたいと思って公募に応募しても、落とされてきました。「クィア・スタディーズ※1およびポピュラーカルチャー研究」という指定のポジションに応募しても1次の書類選考すら通らないとか。私の研究、かなりズバリだと思ったのですが……。まあ、いろんな要因があるのでしょうけれど、応募時に著書を3部送付のこと、となっていたので3冊送るわけですが、返してもくれないので、それはさすがにプンプンしました(苦笑)。
※1 セクシュアリティやジェンダーについて、マイノリティ側に力点をおく研究領域といった意味と思われる。英語圏では一般的に「クィア理論」とよばれる。

文系の研究者と就職の話に関連すると、文系の研究者で、日本学術振興会、通称学振の特別研究員に選ばれたり、著書が受賞するなど、すごい業績を挙げられていたのに、なかなか専任職につけず、そのほかにもプライベートで問題を抱えていて自ら死を選んだ方のことが、少し前に報道されていました。私は大学院がアメリカだったのでよくはわかっていませんが、学振をとった若手研究者というのはすごく評価されたエリートらしいんですよ。それでも就職できなくて、研究費の先の目処もつかなくて絶望する人がいるという。

雲田 これは、日本だけの話ですか? 海外ではどうなんでしょう。

溝口 日本だけ、と言い切るほど世界中の状況を把握しているわけではありませんが、アメリカとは違いますね。2点あげると、アメリカのほうが学際的な研究領域でPh.D.(博士号)をとった研究者が教員として就職できる学際的な学科やプログラムが多いようです。また、少子化で専任の教員数が減らされているのに、国の方針もあって文系で博士号を取得する人数を増やしたので、就職できず、非常勤講師業やアルバイトで食いつなぐ博士号ホルダーが増えているのは、日本のみかもしれません。

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BL進化論 セクシュアリティの歴史、BLの未来

雲田はるこ /紗久楽さわ /溝口彰子

BL愛好家で研究者の溝口彰子さんが、2019年4月にホスト役をつとめた「フューチャーコミックスPRESENTS~BL進化論 サロン・トーク~VOL.2」の模様をcakesでもお届け! ゲストは『昭和元禄落語心中』や『いとしの猫っ毛』の...もっと読む

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tcy79 自分が知りたいから研究する!とても正しい。 10ヶ月前 replyretweetfavorite