大人の別れは、暗闇のようにひたひたとやってくる

小説家の森美樹さんが自分自身の経験を交えながら、性を追及し、迷走する日々を綴るこの連載。今回は、「別れ」について。森さん曰く、好きな気持ちだけでは一緒にいられない大人の恋には、「別れのセオリー」が必要だそう。ところが一方で、セオリーなど無視した、別れの”最終形態”を体験したい気持ちもあるそうでーー?

別れとは、ある日突然やってくるもの。ではない。

大人の皆様なら納得していただけると思う。別れ、主として男女の別れはある日突然やってくるのではなく、暗闇のようにひたひたとやってきて、それをいち早く察知したほうが率先して切り出す。「付き合いも佳境を越えて、穏やかな砂漠みたいになってきたから、ここらでお互い別の地を目指そうか」みたいな感じだ(一緒にオアシスを探す=結婚?という道もあるけどね)。

さもなくば、恋人という空間がひび割れ、違う視界(他の異性の陰)が差し込んでくる。「このまま彼(彼女)といるのも楽だけど、あっちの景色も見てみたい(楽で見慣れた景色を選ぶ=結婚?という道もあるけどね)」と、なんとなく納得した上で別れる。

どちらの場合も、誰かに強制されて別れるのではない。自分達で決定打をくだし、別れるのだ。比較的平和な別れ方である。当然だが、別れ方は二極化していない。出会い方だって千差万別なのだから、別れ方だってそうだ。とはいえ心情的には上記の2パターンに絞られるのではないだろうか。

別れの最終形態

しかし世の中には、別れの暗闇や亀裂をものともせず、とことんまで別れと戦ってみようとする人々がいる。これを仮に、別れの最終形態と呼ぼう。腐れ縁とか泥沼とか称されたり、あるいはそういう段階を越え、警察や病院や法がからんでしまったパターンだ。

こうなるともう、「あなたのことが好きだから」ではなく、「あなたのことが好きな自分をとことん試してみたい」とか「私のことをあなたがどこまで好きなのか確かめてみたい」とか、共依存など、もはや自分本位あるいは自分劇場といった、世の中の理を無視した関係性な気がする。

「そんなバカな、私は彼が好きで好きでたまらないから離れたくないのよ!」と抗議する人もいるでしょう。でも、彼があなたのことを好きで好きでたまらない、わけじゃなかったらどうします? 偶さか、何らかの事情であなたと別れなければならないとしたら。それが彼の本心だとしたら。本当に彼が好きなら、彼のために別れるのが筋ではないでしょうか。

若い頃よりも複雑な事情が渦巻く大人の恋愛には、別れのセオリーも必要だ。出会った時から別れを考慮するのは悲しいかもしれないが、だからこそ充実した時間が過ごせる。私は、出会っていい感じになりそうだと思った瞬間に、別離の妄想をふくらませる。こんなにいい人だから、いい別れ方をしたい。いい別れ方ができるように、持っていきたい。持っていく努力をしたい、という具合だ。

そうはいっても、のめりこめばのめりこむほど、いい別れができないのも知っている。出会った、過ごしたときめきに比例して、悲しみやつらさも大きくなるのだから。

女性は別れの気配をいち早く感じる
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アラフィフ作家の迷走性活

森美樹

小説家の森美樹さんは、取材や趣味の場で、性のプロフェッショナルや性への探究心が強い方からさまざまな話を聞くのだそう。森さん自身も20代の頃から性的な縁に事欠かない人生でした。47歳の今、自分自身の経験を交えながら、性を追及し、迷走する...もっと読む

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