書籍化しました!
“よむ”お酒(イースト・プレス)
本連載『パリッコ、スズキナオののんだ? のんだ!』が本になりました。
その名も『“よむ”お酒』。
好評発売中!
ひとり飲みや、晩酌のお伴にぜひどうぞ
酒の「ひびき」
ナオ パリッコさんの「酒と鍼治療」の回、驚きましたよ! 鍼飲み。
パリ そんなものまで無理に酒と結びつけなくてもというか、こういう類の話って、相当慎重に書いてもどこからかお叱りがくることはわかりきってるんですが、鍼のあとに飲んだ酒が本気でうまかった。
ナオ さっきTwitterに、「お酒は1日空けてから飲んだほうがいいです」みたいなリプライが、普通に私宛てにもきてて笑いました。
パリ はは。ご迷惑を。ただなんというか、初めての体験で、こういう世界もあるんだなと少し世界が広がったのがおもしろくて。
ナオ うんうん。できれば避けたほうがいいけど、このコラムは酒の実験室でもありますからね。
パリ はい。自己責任で。それにしても「ひびき」、かっこよくないすか?
ナオ かっこいい。実は私も昔、取材で顔に鍼を打ってもらったことがあるんですよ。美容鍼というのかな。そこは、鍼をたくさん打っていくスタイルだったので、後で施術中に撮ってもらった写真を見たら、それこそ「ヘルレイザー」みたいになってるような。
パリ 一般的にイメージする鍼。
ナオ 顔が小さくなりましたよ。そう思っただけかもしれないけど。
パリ いや、確実に効果はあるでしょう。実際にツボに鍼、打っちゃってるんだもん。
ナオ あと気持ちよかったです。
パリ ひびきは感じました?
ナオ ひびき、なんとなくわかります。ズンっていう重い感じですよね。
パリ おお! 顔でもそうなんだ。
ナオ それが即気持ちいいってわけじゃない。違和感なんだけど。
パリ そうそう、でもなんか、溶けてくんすよね、悪いものがじわーっと。
ナオ その時に施術してくれた方の話で印象的だったのが、「うちで美容鍼をしてから合コンに行く人が多いんですよー!」って話。顔がシュッとするからって。考えてみると、その人たちも鍼のあとに飲みにいくわけですね。
パリ 小顔効果でモテる!&酒が回って気持ちいい!
ナオ ダブルの効果! って、推奨はされてないでしょうけど。
パリ まぁ、鍼に限らず、この世には自分の知らない感覚ってのがまだまだあると思うんですよ。まだ見ぬひびきが。
ナオ うん。それこそ酒の世界にも「ひびき」ってありますよね。
パリ ある! 悪いものが溶けていくような酒。
ナオ しかも、必ずしもうまい酒を飲んだからひびく、とかではない。まさにいつも我々で探してる「これこれ! 今飲んでいるこれが絶妙にいい酒なんだよ!」っていう。キムタクが言う「ちょ、シーズン……」でもあり。
パリ はは。言ってるのは我々の頭の中のキムタクだけですけどね。酒の穴結成のきっかけが、一緒に川で水面の「波紋」を見ながら酒を飲んでたらあまりにも良かったからじゃないですか。あれも今思えばつまり、ひびいてたんでしょう。
ナオ そういうものに共通する何かに思えます。私たちは「ひびき」を探しているんじゃないでしょうか!
パリ そうだったんだな。「あ、今ひびいてるな〜……」ですよね。ほしいのは。チェアリングで、椅子に座った瞬間なんかもう。
ナオ ズーンと腰にひびきますもんね。
パリ ははは。まさに鍼治療的な。
ナオ いや、立ってる方が腰にひびくのか? とにかく、あるときは、長く歩いたあとの生ビールがひびいたり、あるときはハシゴ酒の果てにたどり着いたスナックの水割りの氷が「カチーン」と鳴った瞬間にひびいたり、みたいな。
パリ 普段なら見過ごしてしまうんだけど、その場の全員、「今のなんか良かったよね」みたいな瞬間ってありますね。共鳴して。
ナオ それがツボに入るってことか。この対談も、「そういうものを各自で探していきましょう! 終わり!」でいいぐらいですよ。
パリ もう発売されてしまったけど、本のタイトルも「ひびき」で良かった。
ナオ はは。「酒の穴」の「“よむ”お酒」でもなかなかややこしいのに。
パリ 結果、誰にもひびかない。
ナオ ユニット名も「波紋」に変えてね。「波紋」の「ひびき」発売中!
パリ ははは。こわ! 「何を伝えたいのか一切わかんないぞこの本!」
より「誰でもない人」を求められるモデル
パリ さて、ナオさんの「酒と路上」の回。あれ? 今までこれを書いていなかったんだ!っ て感じでした。ナオさんなんかもう、日本屈指の「路上人」じゃないですか。
ナオ はは。路上には大変お世話になっております。まあ、これまた難しいんですけどね。私みたいな者が立って酒飲んでるだけで、多くの人は不快でしょうし。
パリ そういう問題も我々の大きなテーマのひとつ。世間とうまく折り合いをつけつつ。できれば少しずつ、いろいろなことにもっと寛容な世の中になってほしい。というのが理想ではあるんだけど。
ナオ もちろん、「こっちもいろいろ気をつけますので!」と思っている。でも、酔っちゃうときは酔っちゃうしなー。とにかく、その是非は置いておいても、独特のものがありますよね。路上飲み。
パリ 路上は最高です。説明不要かもしれませんが、別に道路上というわけではなくて、街なかや公園のちょっとしたベンチだとかでひとり、自分をひびかせてる街の先輩、たくさんいますもんね。
ナオ います。ひびき先輩。あと前にも言ったけど、何人かで飲んだ帰り、23時ぐらいに最後の一杯を路上でっていうパターン。あれが妙に楽しいんだよなー。
パリ いい時間なんですよね。みんな今夜を名残惜しんでるな、っていう空気感。なんかいろんな人と飲んだシーンを振り返ると、その場面ばかりが思い出されるな。
ナオ 別れの盃みたいなね。この前もパリッコさんとbutajiさん、つちもちしんじさんで飲んでいて、最後、路上でお別れの1缶を飲んでいて、妙なテンションになって。近くに証明写真の機械があったんですよね。
パリ はは、あれおもしろかった!
ナオ 証明写真の筐体の壁に、見本として貼ってある女性の写真に目がとまって。
パリ ね、真顔の美人。
ナオ 見本だから、なるべく個性が出ないようにように撮ってあるんだろうけど、その人もこの世に存在している誰かで、今もどこかにいるわけで。
パリ 酒好きかもしれないし。
ナオ もしかして近くで飲んでいた可能性も。でも、それが想像できないくらい整った顔で「いや、これCGかもしれないっすよ?」とか、どうでもいい話がずーっと楽しくてね。
パリ butajiさん、大笑いしながらその人の顔を写真に撮ってスマホの待ち受けにしてたけど、もしあの女性が本当に近くで飲んでて、偶然画面を見たら恐怖でしょうね。
ナオ 恐怖 or 乾杯。
パリ はは。「え? 私のファン!?」っとはならないんじゃないかな〜。
ナオ 例えば、業務用ユニフォームのカタログのモデルさんなんかも当然、一人の人間じゃないですか。
パリ うんうん。でもファッション雑誌のモデルとは明確に違う。存在感が希薄というか。
ナオ より「誰でもない人」を求められるモデル。フリー素材的な。
パリ でも「これが天職なんです!」という気持ちでやってたらと想像すると、すごくいい。「いや〜今日も働いた!」みたいな。業界でもひっぱりだこで。
ナオ 「君、最高だよ! 誰でもあり、誰でもないようで最高!」
パリ ははは。一緒に楽しく飲んでて「ちょっとあれやってあれやって!」って頼んだら、急に個性を無くしてくれる。
ナオ はは。プロの技ね。
酒と何を食べ合わせると楽しいか
ナオ そんなしょうもないようなことが、路上でみんなで飲んでいると浮かんできて盛り上がり、なんか「明日も大丈夫だろ! とりあえず!」という気分になれたりするんですよね。
パリ うんうん。みんなでひびきあってね。路上はひびき効果高いですよ。確実に。
ナオ 酒の鍼の先生がいたら、重い疲れには路上をすすめる。
パリ 酒の鍼の先生。最終的によくわからない場所にたどりついたな。
ナオ はは。酒と鍼ってめちゃくちゃダメな組み合わせですもんね。「窓ガラスと野球」くらい。
パリ 「うなぎと梅干し」くらい。
ナオ 良くない食べ合わせ代表。
パリ しかし、思えばずっと、酒と何を食べ合わせると楽しいかを考えてきたようなもんだ。
ナオ そういう連載でしたね。
パリ でしたでした。で、そんな話をしばらく続けてきた「のんだ? のんだ!」ですが、今回でいったん最終回ということで。
ナオ そうなんです。
パリ いや〜なんつ〜か、青春だった。40代の青春。
ナオ たまに「読んでます!」と言ってもらえるのも嬉しかった。最近でいえば、対談で「シーズンを感じたい」って話をしたでしょう。それを読んでくれたドイツ在住の友達から「ベルリンの公園はそんな人たちでいつもにぎわってる。ぜひふたりでシーズンを感じに飲みにきて!」と言われましたよ
パリ へー! 行きたい。ベルリンシーズニング。そういえば香山哲さんも以前、「ドイツでは老人が車輪付きの椅子でチェアリングしまくっている。テクノ流してお酒も飲んでいる」と言ってたな。もしかして、生まれる国を間違えた?
ナオ かもしれん。もう「のんだ? のんだ!」ベルリン編やるしかない。でも、そういうことに気づけただけでもよかったです。
パリ ですね! 日本でだってあれこれできるわけだし。いつかドイツへ行く楽しみも増えました。
ナオ そんなわけで、これからもなんとか、酒と楽しくつきあっていきましょう。
パリ うん。それにつきます。ではでは、またどこかで〜!
ナオ きっといつか!
パリ 今までおつきあいいただいたみなさま、本当にありがとうございました!
ナオ ありがとうございました!
「パリッコ、スズキナオののんだ? のんだ!」はこれにて終了
ありがとうございました! また会う日まで。
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