人生のタスクとはなにか
青年 ううむ。しかし、まだ問題は残ったままですよ。あの「すべての悩みは対人関係の悩みである」という言葉です。たしかに、劣等感が対人関係の悩みであること、そして劣等感がわれわれに及ぼす影響については、よくわかりました。人生が競争ではないことも、ひとつの理屈としては認めます。わたしは他者を「仲間」だと見なすことができず、心のどこかで「敵」だと思っている。間違いなくそうでしょう。
ただ不思議なのは、どうしてアドラーがそれほどまでに対人関係を重視しているのか、「すべて」とまで言い切っているのか、という点です。
哲人 対人関係はどれだけ大きく考えても足りないくらい、重要な問題です。前回、わたしはいいました。「あなたに足りないのは、幸せになる勇気だ」と。覚えていますね?
青年 忘れようにも忘れられませんよ。
哲人 それで、どうしてあなたが他者を「敵」だと見なし、「仲間」だと思えないのか。それは、勇気をくじかれたあなたが「人生のタスク」から逃げているせいです。
青年 人生のタスク?
哲人 そう。ここは大切なところです。アドラー心理学では、人間の行動面と心理面のあり方について、かなりはっきりとした目標を掲げています。
青年 ほう。どういった目標でしょうか。
哲人 まず、行動面の目標は「自立すること」と「社会と調和して暮らせること」の2つ。そしてこの行動を支える心理面の目標が「わたしには能力がある」という意識、それから「人々はわたしの仲間である」という意識です。
青年 お待ちください。メモしておきます。
行動面の目標が、次の2つ。
①自立すること
②社会と調和して暮らせること
そして、この行動を支える心理面の目標として、次の2つ。
①わたしには能力がある、という意識
②人々はわたしの仲間である、という意識
まあ、大切な話であることはわかりますよ。個として自立しながら、人々や社会と調和しながら生きる。これまでの議論ともつながってきそうな話です。
哲人 そしてこれらの目標は、アドラーのいう「人生のタスク」と向き合うことで達成できるわけです。
青年 では、その「人生のタスク」とは?
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