嫌われる勇気

第二夜 vol.6 哲人は喝破する。「あなたは人生のタスクから逃げている」

人間の悩みはすべて対人関係の悩みである。それがアドラーの、そして哲人の主張でした。納得のいかない青年は、なおも食い下がります。いったいどうして「対人関係がすべて」なのか。わたしはなぜ、他者を敵だと思っているのか。さらに自分はどうすれば他者を敵とみなさず、味方だと思えるようになるのか。哲人の口から語られたキーワード、それは「人生のタスク(課題)」というものでした。

人生のタスクとはなにか

青年 ううむ。しかし、まだ問題は残ったままですよ。あの「すべての悩みは対人関係の悩みである」という言葉です。たしかに、劣等感が対人関係の悩みであること、そして劣等感がわれわれに及ぼす影響については、よくわかりました。人生が競争ではないことも、ひとつの理屈としては認めます。わたしは他者を「仲間」だと見なすことができず、心のどこかで「敵」だと思っている。間違いなくそうでしょう。
 ただ不思議なのは、どうしてアドラーがそれほどまでに対人関係を重視しているのか、「すべて」とまで言い切っているのか、という点です。

哲人 対人関係はどれだけ大きく考えても足りないくらい、重要な問題です。前回、わたしはいいました。「あなたに足りないのは、幸せになる勇気だ」と。覚えていますね?

青年 忘れようにも忘れられませんよ。

哲人 それで、どうしてあなたが他者を「敵」だと見なし、「仲間」だと思えないのか。それは、勇気をくじかれたあなたが「人生のタスク」から逃げているせいです。

青年 人生のタスク?

哲人 そう。ここは大切なところです。アドラー心理学では、人間の行動面と心理面のあり方について、かなりはっきりとした目標を掲げています。

青年 ほう。どういった目標でしょうか。

哲人 まず、行動面の目標は「自立すること」と「社会と調和して暮らせること」の2つ。そしてこの行動を支える心理面の目標が「わたしには能力がある」という意識、それから「人々はわたしの仲間である」という意識です。

青年 お待ちください。メモしておきます。
 行動面の目標が、次の2つ。
①自立すること
②社会と調和して暮らせること
 そして、この行動を支える心理面の目標として、次の2つ。
①わたしには能力がある、という意識
②人々はわたしの仲間である、という意識
 まあ、大切な話であることはわかりますよ。個として自立しながら、人々や社会と調和しながら生きる。これまでの議論ともつながってきそうな話です。

哲人 そしてこれらの目標は、アドラーのいう「人生のタスク」と向き合うことで達成できるわけです。

青年 では、その「人生のタスク」とは?

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嫌われる勇気

岸見一郎 /古賀史健

「世界はどこまでもシンプルであり、人はいまこの瞬間から幸せになれる」――古都のはずれに、そんな持論を語る哲学者が住んでいました。人間関係に苦悩し、人生の意味に悩む「青年」は、到底納得することができず、その真意を確かめるべく哲学者(哲人...もっと読む

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コメント

porpor35 「どれほど困難に思える関係であっても、向き合うことを回避し、先延ばしにしてはいけません。たとえ最終的にハサミで断ち切ることになったとしても、まずは向かい合う。」 5年弱前 replyretweetfavorite

mm0905 ますますふかい展開になってきた⇒ 5年弱前 replyretweetfavorite

premaya https://t.co/qCWlGiKbXm これってアドラーが言ったことじゃなくてパセージそのままだよね。。。著作権とかいいのだろうか? 5年弱前 replyretweetfavorite

3keys_takae この連載も面白い。アドラー心理学をわかりやすく解説してます→ 5年弱前 replyretweetfavorite