嫌われる勇気

第二夜 vol.1 青年は憤る。「先生、それでもあなたは哲学者ですか!」

好評連載『嫌われる勇気』は、全五夜のうち、第二夜へと突入。アドラー心理学の考え方にまだ全然納得できていない青年は、「ある確信」をもとに、再び哲人のもとを訪れる。はたして、哲人と青年の「対話」はどこへ進んでいくのか? 知ってしまったらもう引き返せない〝劇薬〟連載は、さらにその切れ味を増していきます!

 青年は律儀に約束を守り、きっかり一週間後に哲学者の書斎を訪れた。ほんとうは二日後、三日後にでも押しかけたい気分だった。熟考のうちに、青年の疑念は確信に変わっていた。すなわち、目的論など詭弁であり、トラウマは確実に存在する。人は過去を忘れることなどできないし、過去から解放されることもできない。今日こそはあの風変わりな哲学者を完膚なきまでに論破し、すべてに決着をつけてやる。


なぜ自分のことが嫌いなのか

青年 先生、あれから頭を冷やしていろいろ考えたのですがね、やっぱりわたしは先生のご持論に同意することはできませんよ。

哲人 ほう、どこに疑問を感じるのですか?

青年 たとえば先日、わたしは自分のことが嫌いだと認めました。どうやっても短所しか見当たらず、好きになる理由が思いつかない。でも、当然ながらわたしだって自分のことを好きになりたいのです。
 先生はなんでも「目的」で説明しようとされますが、いったいなんの目的があって、つまりなんの利益があって、わたしは自分を嫌っているのです? 自分を嫌ったところで、得るものなどひとつもないでしょう。

哲人 なるほど。あなたは、自分には長所などないと感じている。短所しかないと感じている。事実がどうであれ、そう感じている。自己評価が著しく低いわけです。問題は、なぜそれほど卑屈に感じるのか、どうしてご自分のことを低く見積もっているのか、です。

青年 事実としてわたしに長所がないからですよ。

哲人 違います。短所ばかりが目についてしまうのは、あなたが「自分を好きにならないでおこう」と、決心しているからです。自分を好きにならないという目的を達成するために、長所を見ないで短所だけに注目している。まずはその点を理解してください。

青年 自分を好きにならないでおこうと決心している?

哲人 ええ。自分を好きにならないことが、あなたにとっての「善」なのです。

青年 いったいなぜ? なんのために?

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嫌われる勇気

岸見一郎 /古賀史健

「世界はどこまでもシンプルであり、人はいまこの瞬間から幸せになれる」――古都のはずれに、そんな持論を語る哲学者が住んでいました。人間関係に苦悩し、人生の意味に悩む「青年」は、到底納得することができず、その真意を確かめるべく哲学者(哲人...もっと読む

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コメント

RIME3726 |嫌われる勇気|岸見一郎/古賀史健|cakes(ケイクス) http://t.co/P8UZyuzFz4 4年以上前 replyretweetfavorite

porpor35 「「いまの自分」を受け入れてもらい、たとえ結果がどうであったとしても前に踏み出す勇気を持ってもらう」 5年弱前 replyretweetfavorite

mm0905 「すべての悩みは対人関係の悩みである」⇒ 5年弱前 replyretweetfavorite

fumiken 【嫌われる勇気】大好評の大型連載、 5年弱前 replyretweetfavorite