家庭問題に翻弄された子も危ない!
敏感で繊細な子は、家族のストレスも直に受けてしまいます。
ある子の例です。
ご両親が神経発達症で、子育てがうまくできませんでした。夫婦喧嘩をして離婚したのですが、どちらも子どもを引き取らないので、ある方が母親代わりとなり育てることになりました。
学校に入ってから、私も呼ばれていろいろ学校での対応を相談しました。その方はものすごくまじめで熱心。そのおかげでその子も素直に育っていくのです。
その子は、家庭でいろいろなストレスを受けて、育ちのトラウマがありました。それと、生まれ持った敏感さと神経発達症があります。対人関係が苦手で、敏感で、聴覚過敏。さらに、運動が苦手です。頭はいいのですが、「書き」のLD(学習症)で、読めるけれども書くことが苦手でした。
勉強はできるほうでしたから、進学校に入ります。ところが、高校2年生のときに悪い仲間とつきあったりするようになり、非行に走ってしまいます。
人がいいから、友だちもできる。その一方で育ての親に悪態をつく。
それでもその方は、その子の面倒を見続けました。
なんとか大学に入ることができたのですが、それまで張り詰めていた気が緩んでしまったのか、全然勉強しなくなって、すぐに大学に行かなくなってしまった。いいところがある子なのですが、あまりにも心が傷ついていて、ともすれば迷走してしまいやすい。危ういものを抱えています。
この子の心の傷の一番の問題は、こうしたい、ああしたいという自我が弱いことです。父親から罵倒され、否定され、それを文句も言わずに堪えしのんできた。お母さんからは見放され、育ての親が母親代わりになってくれた。しかし、その方は愛情は注げても本来の親としての役割を果たせません。両親に対する葛藤が癒えない限り、自分の芯を持って生きていけるようにならないかもしれません。
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