おひとりさまこそ家を買うべきか? おひとりさまが絶対に手放してはいけないものについて。

おひとりさまでも家族がいても、誰もが気になる、賃貸が得か持ち家が得か問題。特に一人だと、老後に賃貸料を払い続けられるか不安になる人も多いでしょう。この難問に、経済評論家の佐藤さんはズバッと解決策を示します。

ひとりでいることの最大のメリットとは?

おひとりさまで送る人生の最大のメリットといえば何でしょうか?
それは、ミ・ガ・ル。身軽だということだと思います。
断言します。

多くの中年男が歯を食いしばって、気に入らない職場で働き続ける選択をします。

我慢し続ける理由として多くの人が口にするのは、自分には責任があるからということです。
妻や子どもを食わせなくちゃいけないから、自分はどんなに辛い職場でも我慢するんだというのです。

我慢して嫌な職場で働かなくても、他できちんと稼げるのであれば、さっさと辞めていい職場に移り、明るい笑顔で違う仕事に就けばいいのにと思います。
父や夫が明るく幸せそうに働いていて、金も稼いでくれる方が家族もハッピーです。
嫌な職場を辞めない理由は、自分をまともな給料で雇ってくれる会社がない、もしくは、違う仕事をすることや転職の失敗が怖いからという場合も多いように思うのです。

大変言い難いことですが、自分の非力、弱さを認めるのが嫌だから、我慢の理由を家族に押し付けるのです。
「お父さんは、嫌な職場でも私たちのために頑張って働いてくれている」と家族から言われるのはいいとしても、「いったい誰のために働いていると思ってんだ!」と言ったらおしまいです。
多くの家庭は崩壊に向かいます。結婚して男が口にしてはいけない言葉です。

妻だって言いたいことがあるんです。
いったい誰のために家事をしてると思ってるの!と言いたいはずなのです。それも無給で。
多くの場合で、生活費が足りないとか、子どもの学費のために、共働きかパートで働かなければならないのです。
外で働く理由が、自分の趣味や遊ぶためのお金という人はあまりいません。

もちろん絵に描いたような幸せな家庭もあるでしょうが、それは絶対に圧倒的な少数派です。
だからと言って、家族のために歯を食いしばる人生を否定してるわけではありません。
もちろん、家族のために頑張る人は立派です。何十年もそうやって個を押し殺し家族のために尽くした人生を経て、若いころの恋愛や肉体による結びつきや、戸籍だけで縛られたわけでもない、本当の意味での夫婦としての深い結びつきを築き上げることができることもあるからです。
でも、うまくいけばです。

それに反して、おひとりさまは「いったい誰のために働いてると思ってんだ」と愚痴をぶつける相手はいません。
自分のために働いているのです。
中には実家の年老いた両親に仕送りしたり、離婚した妻の元にいる子供たちに養育費を送っている人もいるでしょう。 
それでもやっぱり身軽です。

休日に何時まで寝てんだ!とか、ゴミを出しておいてとか、裸で家の中をぶらつかないで、なんて言われません。好きな時間に寝て、好きなものを食べて、嫌なことはしないし、大切なことを邪魔されることもない。そんな生活を送ることが可能なのです。

そして、嫌な仕事は自分の腹さえ決まればしなくていいし、転職して困っても困窮するのは自分だけで他者に迷惑はかかりません。身軽なのです。

経済的な問題さえクリアできれば、東京に住もうが、沖縄に移住しようが、海外で働くことだって可能です。海外は言葉や文化の問題がありますが、日本国内であれば、好きな場所で暮らすことはほぼ可能なはずです。
なぜなら、住人がいるところ、特に現役世代が住んでいるところは、そこで働きながら、暮らしている人が現にいることの証明でもあるからです。

離婚した妻や子どものために転職を諦めるという人はあまりいないように思います。
自分の人生のキャリアを思うままに描けるのです。
成功も失敗もあるでしょうけれど、誰に押し付けられたわけでもなく、自分で選択して歩んだ結果なのです。

そんな、おひとりさまの最大のメリットである、身軽さにブレーキをかけてしまうものがあります。
それは、住宅です。
マイホームです。

毎月出て行く家賃を計算する。月に10万円の家賃、2年に一度の更新料。これから一生、賃貸住宅に住むとすると、幾らになるんだろう。電卓で計算しちゃうと危ないです。
10万円の家賃で1年間で120万円、書の他諸経費が1ヶ月分したとして、130万円。
30年とすると3900万円にもなるからです。

3900万円! 
賃貸じゃなくて、マイホームが買えてしまう金額です。
30歳から30年間で3900万円。その間はいいとして、60歳以降も賃貸住宅に住んでいる限り、家賃は必要です。 
収入がなくなり、年金で暮らしていくようになったら、毎月10万円の家賃は払えなくなってしまうと怯える気持ちに支配されます。
この不安が、独身でマイホームを買うという選択をさせる大きな要因になります。

マイホームなら、一生涯、家賃を払い続けるという呪縛から解放されるはずだと思います。なんか安心感、安定感を感じてしまいます。
本当にそうでしょうか?

おひとり様が絶対に失ってはいけないこと。それは、身軽。
自由でいることです。
おひとり様を守ってくれるのは自分自身しかいません。

例えば、子供のいる家庭であれば、子どもの教育を考えて引っ越しができない、夫の仕事のために引っ越しをしなくてはならない。その度に自分のしたいこと、積み重ねてきたものを犠牲にしなくてはならないこともあるのです。
それは、家族という共同体を持つことの良いところと残念なところです。家族でなくても、誰かとともに家庭や共同体を作るとそういう制約が多かれ少なかれ生まれるものです。自由が制限され縛られる。

もちろん、世の中には家族を持ちながらも、ほぼ自分の好きなように生きることが許される人もいます。しかし、それはごくわずかな例外まなのです。

自分の将来を考えてやりたいこと、挑戦してみたいことも、家族などがいたらできない選択を自由にできることがおひとり様の良さであり、結果を全て自分で受け入れなくてはならないという厳しさなのです。

マイホームは長期の住宅ローンを組み購入するのが一般的でしょう。
それは、今後30年間の賃貸契約を結んだのと同じです。
購入した30歳前後の時には考えられなかった可能性が見えてきた時に、大きな足かせにならないか。
家族であれば、仕方ないとしても、住宅とそのローンに自分の人生の選択を縛られてしまうのはあまりにも愚かだと言わざるをえません。

33歳の時に一生東京に住むんだと決めて買った郊外のマンション。
仕事ぶりが認められて35歳の時に大阪やトロントにある会社が働かないか?とオファーをしてくれた時に、買ったマンションが足かせになります。
バリバリ働いている時に毎月10万円の家賃を払っていたとしても、ある日、どうしても作家になりたい、陶芸家になりたいと思ったとします。どうしても、ということはある程度の経済的な変化を受け入れるということです。
作家や陶芸家に挑戦するために、10万円の家賃のマンションから4万円のアパートに引っ越すことは素晴らしいことだと思うのです。おひとりさまの特権です。

しかし、住宅ローンがあったらそういう選択はできません。

私はそんな夢みたいなことは考えていない。ただ普通に暮らせればいい。
そういう身軽さよりも、将来のことを考えた時に、家賃を払うという重荷から抜け出したいという選択は間違ってるの? そういう質問を山ほど受けてきました。
私の答えは単純です。

一生、住宅に対する支出から抜け出すことは決してできません。

住宅を購入したとしても、固定資産税、マンションなら管理費や修繕積立金、そして、火災保険や地震保険といった賃貸住宅の人には不要な支出があります。
35歳の時にマンションや一軒家を30年のローンで購入したとします。30年間、働き住み続けたとします。65歳です。
65歳になればローンは無くなるかもしれませんが、住宅にかかる固定資産税、管理費や修繕積立金、火災保険、地震保険は残ります。そして、30年も使ったらキッチン、トイレやバスなどの水回りや壁紙、床材なども新しくしたくなるのではないでしょうか?
あなたは、今30年前の住宅設備で暮らせますか? 嫌でしょう? ですから、それに対して数百万円のお金が必要になります。

やっと住宅ローンが終わったと思ったら、今度はリフォームローンが始まるのです。
リフォームローンで終わればいいのですが、30年も経てば、マンションも一般住宅も建て替えを考えるタイミングです。建て替えは無料ではできません。
数千万円の資金が必要ですし、引っ越しなどの費用もかかります。

街を歩いてください。きっとあなたの街にも、この家は何年前に建てたのだろう?という相当古い家があるはずです。あなたは、そこに住みたいですか?
 
住宅ローンが終わると、新しい住宅ローンが始まるものなのです。
特に集合住宅。つまり、分譲マンションなどは、自分や建て替えなど必要ないと思っても、住民の大多数が賛成すれば建て替えしなくてはなりません。お金も必要です。

そして、日本は災害大国です。

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おひとりさまの家計経済学  

佐藤治彦

「普通の人が老後まで安心して暮らすためのお金の話」「普通の人がケチらず貯まるお金の話」でシリーズほぼ12万部の経済評論家、佐藤治彦のおひとりさまと、将来おひとりさまになりそうな人が、直面する経済と生活の問題を真正面に取り上げて、その具...もっと読む

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Ripojiro おひとりさまこそ家を買うべきか? おひとりさまが絶対に手放してはいけないものについて 『身軽 聞か猿 岩ざる』で、お一人様のツイッタラー投資家は、淡々と積立てるだけで成功すると思うで (´・Д・)」 https://t.co/jfINf8NUUq 22日前 replyretweetfavorite

satoharuhiko2 ものすごく毒づいた文章になっていますので、気分を悪くされるかもしれません。「おひとりさまの家計経済学」の新しいものがアップされました。よろしければ読んでやってください。 https://t.co/TwnzzAEgFg 23日前 replyretweetfavorite