あるIT関連企業が、年間に支払う法定雇用率未達に伴う納付金、すなわち罰金は数千万円規模に及ぶ。
同社は、対外的には法定雇用率を達成していると公言している。社内でも、人事部は社員から聞かれれば「当社はクリアしている」と答えるのだろう。
しかし、そもそもこの制度は、従業員が100人以上の企業には全て課されるもの。グループ内には、そんな子会社は数多くあるが、本社ほどは注目されない。そのため、PR的な観点では、いちいち障害者雇用を進める意味はない。むしろ余計な仕事を増やすくらいならば、罰金を払って済ませた方がましと考えているようだ。
一定の規模以上の企業グループは、似たような事情にあると推定できる。こうした企業は、罰金を永遠に払い続けてでも、障害者雇用から距離を置こうとする。
一方で、自社が所有する農園を企業に貸し出し、そこに社員として雇用した障害者を送り出すことによって、その企業の法定雇用率に組み込めるという独自のサービスを打ち出す新興企業もある。
障害者の雇用創出という観点では、こうした取り組みを否定するわけではない。だが、障害者の持つ能力を自社の事業に活用するという発想ではなく、利用する企業にしてみれば「雇用率を買う」に等しい。あえて、罰金を払うのと大差がないともいえる。
これから、障害者雇用の流れはどうなっていくのだろうか。
障害者雇用を積極的に推進している先進的企業としては、神奈川県に本社を置きチョークなどを製造する日本理化学工業(全体の70%以上が知的障害者)、広島県に本社を置き食品トレー容器などを製造するエフピコ(同90%が知的障害者)などが知られている。
だが、こうした企業はあくまで例外的な存在で、すぐにまねることはできない。
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